13香里VS栞
[8/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
相沢さん、何か食べたい物ありますか?」
「え? いえ別に」
とてもそんな雰囲気では無かったが、何とか状況を変えようとする父。
「あんた達、またさっきみたいな事したら、次はこれぐらいじゃ済まないわよっ」
「「はい…」」
母親の体罰は絶大な威力を発揮していた。お父さんと祐一クンは、また同じ表情で震え、隣にいる人は将来の自分だと、祐一は思った。
その後、外食に出るため着替えを始める香里、そこで父親と栞は追い出されたが、祐一は部屋に残され、手は握ったままだった。
「お前、女の子なんだから、着替えの間ぐらい」
「もう子供じゃないわよ、昨日「女」になったの、それにもうすぐ「母親」よ」
下着を替える間も、明るい場所で体を見せる香里、いつも恥ずかしがる栞とは正反対だった。
「ほら、これがあたしが初めてだった印。貴方にあげたんだから、これも持ってて」
「え、ああ」
ショーツに張り付けていた血が付いたナプキンを、自分が乙女を捧げた相手に見せ、下着ごと袋に入れて渡す。
「母さん、さっきのハサミも祐一に渡して」
「香里……」
先程の強い母はどこに行ったのか、また昨夜の電話のように涙声になる。
「これも、これもっ、あたしの制服もあげるっ、これも、持ってて」
声を震わせながら、制服のリボンやシャツ、思い出の篭った制服まで、遺髪と一緒に紙袋に入れて行く香里。もし何かあっても、絶対に忘れられたくなかったらしい。
「そんな、何から何まで貰わなくても、また学校行く時に困るだろ」
「もう、行けないわ」
香里にはそんなつもりが無いのと、今のままでは病院の外に出るのさえ、許可と付き添いが必要だった。
「おい」
その言葉で、母親だけでなく、また祐一まで泣きそうになる。
「ねえ、あたしにも祐一の物、何か頂戴。祐一がいなくても、絆が感じられような何か」
「…何がいい?」
手を出して、身に付けている数少ない物を見せる。
「じゃあ、腕時計交換して」
「ああ」
自分の男物の時計を外すと、香里の女物の細い時計を渡される。
「あったかい……」
祐一が外した時計を頬に当て、温もりを感じている香里。次第にそれが自分の体温と同じになると、左腕に巻いて一番奥の穴に留め金を入れた。
「ぶかぶか」
香里の痩せ細った腕には、男物の時計は大き過ぎて、腕を上下していたが、それでも嬉しそうに握って体に馴染ませる。
「でも、なんだかエンゲージリングみたい」
「そうだな」
祐一も、香里の腕時計を巻いていると、二人の時間が繋がっているような感じがした。
「止められなかったら、この辺りに穴開けて。母さん、栞のカッター貸して」
祐一から腕時計を外すと、印を付けた場所に新しい穴を開け、また祐一に戻して自分で金具を止める香里。
「お風呂の時
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ