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に精を吸い尽くされ、またヒットポイントが0に近付いて行く祐一。
「相沢君、凄い……」
「やっぱり奇跡ってあるのねっ」
「うっ、ううっ」
香里の友人も、取材班も、その光景を見て驚いていた。
(フッ)
その時、祐一にだけは、香里がタオルの下で「おいしい口」をしているのが分かった。
(やっぱり魔物はこいつだ)
「妹もこうしてたら治ったんです、昨日も母さんだって良くなったんですよ」
あくまで手を握ったと言っただけで、あんな事やこんな事は公表しない香里。
「凄い。あの、今までそうやって他の患者さんが良くなった事はありますか?」
興奮隠せない様子で聞くディレクター、きっと10年ほど前に有名になった、超能力少女でも思い出しているに違いない。
「いえ、ありませんけど」
「一度お願いできませんか? 今ここで取材している方がいるんですけど、ずっと目を覚まさなくて、このまま衰えて行くだけの状態なんです」
どこかで聞いたような症状の患者を紹介されるが、取材や撮影をしても、何の改善も見られず亡くなった場合、「お蔵入り」になる場合もあった。
「はあ、でも、今は倒れそうなんで、ちょっと休ませてもらえませんか?」
「はい、すぐでなくても構いません、でも、その子も」
いかにも「もう永く持たないんです」と言いたげな話をされ、観念する祐一。
「分かりました、今からでも行けます」
「そうですか、ちょっと連絡してみます」
病院内だったが、香里の部屋には特別な機器が無かったので、慌てて携帯電話を使ってしまうディレクター。
「祐一…?」
「は?」
そこで香里が、祐一の腕を掴んだ。
「まさか、またあたしを置いて行くつもりなのっ?」
声を震わせながらも、爪が食い込んで、血が出そうなぐらい強く握り締めて来る。
「いえ、この病院ですから、エレベーターに乗ればすぐです」
香里の尋常では無い目つきを見て、慌てて説明するカメラマン。
「何してるのっ、離してっ」
祐一に刺さった爪を見て、引き離そうとした栞だったが。
「触らないでっ!」
昨日よりも、さらに恐ろしい表情で妹を威嚇する。
「お姉ちゃん、急にどうしたの?」
栞ですら、姉の急変には驚いていた。その左手に宿った魔物の力が発動した時、香里もまた魔物になる。
「おいおい、喧嘩するなって言っただろ、人助けだ、お前も来いよ、外出もできるんだろ? 車椅子押して行ってやるから」
腕の痛みを物ともせず、もう片方の手て頭を撫でてやると、次第に香里の表情が元に戻って行った。
「香里、怖いよ」
「ああ、昨日からちょっと気が立ってるからな、噛むは、引っ掻くは、殴られるは、大変だったんだぜ」
香里の友人まで怖がったので、祐一は冗談めかして言ってみた。
「噛んでないでしょ?」
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