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認め、その辺りを香里に言い含めていた場合。
「祐一っ!!」
(来た……)
病室に戻るなり香里に胸倉を掴まれて、優しく質問されちゃう祐一クン。
「どうしてっ? 私を捨てて栞と結婚するつもりなのっ? 昨日の約束は何だったの? ねえっ、答えてっ!!」
すでに泣きながら半狂乱になった香里の、普段より2オクターブは高い声が病室に響く。
「そ、それはやっぱり、先に約束したから」
「じゃあ、貴方を殺して私も死ぬぅっ!」
隠し持っていた昨日のハサミを握って、祐一をチョキチョキするために振りかぶる香里ちゃん。
「あいや〜〜っ!」
ザシュウウッ!
前の妄想シーンに戻る……
(果物ナイフとかハサミって、ちゃんと片付けてあるのかな? ぐっすん)
末期患者には、そういった配慮がされているはずだが、昨日散髪に使ったハサミが自分の胸か腹に収まりそうで、その予定の場所がズキズキと痛んだ。
「そろそろ戻りましょうか、あいつらも相沢さんがいないと寂しがりますから」
「は、はい」
アイスクリームが切れて、戦場となっているであろう病室に送還される祐一。どこかの外国人傭兵部隊のように年季を収めるか、違約金を払わないと帰れないらしい。
(ぐっすん……)
やがて、父の涙も収まり、香里のいる階に下りて来た二人。
「昔は私が帰ったら、二人とも玄関まで来て飛び付いて来たもんですけど、今は抱き付くのは相沢さんですかな?」
「いえ、そんな」
祐一の対応が誠実?だったので、「栞」の嫁ぎ先としては申し分無いと安心した父。
「栞にしろ、香里にしろ、どちらか貰って頂いた後は、医療費の負担は掛けません。こちらで用意させて頂きますので、楽しい思い出だけ作ってやって下さい」
病気の娘を貰ってくれるような家は無いので諦めていたが、娘が自分で見付けた相手と幸せに暮らして行けるように願う父。
しかし「残り少ない人生を少しでも幸せに」とか「娘のどちらか、生き残った方と結婚」と言う、最悪の選択肢を忘れた訳ではなかった。
「すみません、俺もせめて、高校卒業したら働こうと思ってます」
祐一も今までの会話で、両親とも「二人が長生きできない」と思っているのを察していた。
「いえ、いいんですよ、学生結婚なんてのもあるでしょう、その方が、時間も自由になりますし」
父も祐一の言葉だけで十分だった。働いたり、アルバイトなどしていると拘束時間が長く、何かあった時に間に合わない。
「あっ、あなた、ちょっと」
「どうしたっ」
病室の前で待っていた母親に呼ばれ、足早に戻る二人。
「あのっ、香里がテレビ局の人を呼んでしまって、それにお友達も」
「「「「「「おはようございます」」」」」」
神妙な表情をしている者、泣いている者、そして香里の顔と手は、また血の
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