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しくは泣いているだけかも知れないが、間を取って泣き寝入り辺りが妥当と思われた。
「じゃあ相沢は?」
「あいつならまだ病院にいますよ、香里の妹が治った時みたいに、あいつが一緒にいたら治るってっ、俺にそんな力があったら、俺だって、俺だって、畜生っ!」
ドカッ!
また机に腕を振り下ろし、右手を押さえる北川、恋愛感情のもつれもあったらしい。
「やめなさいっ、もう右手は使わないでっ」
これ以上手を痛めないよう、腕で押さえて触診を始める保健医。
「またそんな下らない話を、変なうわさを信じるなっ」
「待ちなさい。北川君、その子はそんなに具合が悪いのかね?」
ようやく日本語で話せそうな相手が見付かり、目線を上げ少し落ち着いて話す。
「ええ、俺なんかより、保健の先生の方がよく知ってるでしょ、香里と妹が同じ病気だって」
「そんな……」
全員の視線が集まってしまい、戸惑う保健医。
「どうなんだね、我々ならもう事情を知っている、隠す必要は無い」
「はい、そうです、発作も症状も同じでした。私も最初、水瀬さんに呼ばれた時、妹さんが倒れたんだと思っていましたから」
「そうかね、北川君、その話、他の生徒に話してはいかんよ、心配させるだけで私達には何もできんのだから。それと怪我をしているなら「病院に」行って来なさい」
「はい」
教頭からは、温かみのある言葉が出たが、緘口令は出された。
その頃、教室では……
「グスッ、うっ」
「香里っ、死なないで」
「昨日行った時も、面会謝絶って言われたから、何かあると思ってたけど、まさか?」
直接香里から電話があった者、その話を聞いた者達が泣いていた。担任からの見舞い禁止令を破った者も、祐一と二人にするため家族の希望で断られただけだったが、女の噂話に戸は立てられなかった。
「水瀬さんと相沢君は家から連絡がありましたが、他の子はどうしたんですか?」
ホームルームが始まり、別の教師が出席をとっていたが、すでに名雪、香里グループの数名が姿を消していた。
「美坂さんのお見舞いに行きました」
自分達と同じ教室から、初めて死者を出すかも知れない状況に、ある者は泣き、ある者は青ざめた。
(ふんっ、何でも無かった事にして、3ヶ月経ったら一輪挿しでも立ててごまかそうって思ってもそうは行かないわ。机や私物だって、汚い物でも片付けるみたいに始末させてたまるもんですか)
今まで学校や近所で、栞の扱いを見続けた香里は、栞が触れた物がまるで病原体のように捨てられ、汚染されたように洗浄されるのを見て来た。
(あたしは栞みたいに逃げも隠れもしない、絶対忘れられないようにしてやる)
そのいじめに参加するように、栞を無視していた香里だが、自分には同じ対応をされるのが怖かったのか、今までの栞に対する仕打ち
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