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も言わなかったわ」
嫌とは言わなかったが、「もう許してくれ」とか「勘弁してくれ」は、何度も言った覚えがあった。
「誰もここまでしろなんて言ってませんっ」
「ただの寝不足よ、寝てたら治るわ」
そう言いながら、ガニ股で立って、今ひとつ格好が着かない香里。
「ああっ、もうっ」
とりあえず手持ちの強壮剤を口に含み、口移しで飲ませる栞。
「あっ! 何するのよっ」
「ぐふっ!」
モンスター?が持っていた薬草の、強烈な味で完全に目が覚める。
「ゴホッ、ゴホッ、凄えっ」
医薬品指定外のドリンク剤と違い、ホンモノは一味違ったらしい。
「どうしてこんな事になったんですか?」
祐一の手を取って、優しく問い掛ける栞。
「ああ、昨日、電話が終わって帰ろうとしたら、「屋上か窓から飛び降りる」って言われて、その後も凄く弱ってたから、放っておけなくてな」
「なっ、何よっ、弱ってなかったら帰ってた訳? じゃあ昨日のあれは何だったのっ? あたしだけの夢? 幻っ?」
早速壊れ始めた香里を見て、手招きして呼び寄せる。
「やめろよ、俺なんかのために争うなよ、たのむ」
落ち着いた(死にかけた?)表情で言われ、渋々納得する二人。
「わかったわよ」
「はい…」
「栞、家の人は?」
「はい、もうすぐ上がって来ると思います」
一人だけ先に、7階まで階段一気駆け上りで到着したらしい。健常者でもちょっと無理な芸当を軽々とやってのけた結果、病院では「地下の霊安室から7階まで駆け上がる女の子の幽霊」の話題が暫く続いた。
「香里っ!」
バサッ
扉の方から、二人の母親の声と、紙袋でも落とすような音が聞こえた。
「こんなに元気そうになって」
昨日のように、生きている人間の色指定としては間違った配色と違い、健康な顔色になった娘を見て驚く母。
「ええ、今日、退院するって言ったでしょ」
「髪は、切ったの?」
「病院じゃ邪魔だから、祐一にあげたの」
「そう」
その言葉で、何となく娘の決意を知ったような気がした母。
「相沢さん、ありがとうございました」
自分で立って、血色も良くなった香里と、逆に真っ白になった祐一を比べて、手を取って母親に感謝される。
「いえ…」
そこで「大した事はしてませんから」と言おうとしたが、労働力としては相当な物だったのと、香里の家族を見て何かがプッツリと切れ、喋る体力が無くなっていた。
「相沢さんっ、こいつのこんな元気な顔、久しぶりに見ましたよ」
荷物を拾い集めて来た父親も加わり、両手で握手して感謝される。
「はぁ」
(娘二人とも傷物にして、なんで喜ばれるんだろう?)
そう考えはしたが、誰が見ても病人は祐一で、弱っているのは眠れなかった両親と栞、一番元気そうなのは香里だった。
「と
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