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「オイッ」
周りが女ばかりなので、全く気にしないで話をする香理。
「先生っ」
やがて主治医らしき人物が現れ、外で婦長に耳打ちされる。
「退院したいそうですが?」
「はい」
「はっきり言ってお勧めできません、妹さんは急変してから2ヶ月で退院しました、長い人生の中のほんの2、3ヶ月、休んで見るつもりはありませんか?」
「その2、3ヶ月で死ぬんじゃなかったんですか?」
また嫌な顔をして頭を抱え、祐一を睨む医者。
(俺かよ)
その通り。
「違いますっ、もしこのまま放っておけば、そうなるかも知れないと言う仮定です、妹さんと同じ治療をすれば必ず治る。血縁者で同じ症例の場合、同じ結果になる例はいくらでもありますっ」
熱く語る医者に、少し気押されながらも反論する香里。
「…ですから、妹と同じ」
「は?」
「恋人と一緒にいて、あちこち出歩いたり、抱き合ったりすれば治るそうです、妹がそう言ってましたっ」
昨日の凄い情事を聞かれていないとでも思っているのか、純情そうに頬を赤く染めて、横を向きながら一気に言い切る。
(相手が男の時はこうなるんだな)
同性からは嫌われるタイプらしいが、名雪だけは天然で、お互い放っておけないタイプらしく、相互補完の関係にあった。
「分かりました、外出は認めましょう、必ず付き添いを付けて、最初は自宅までか、近距離だけです」
「はい」
「投薬の条件も同じです、朝食後と夕食後は点滴、水分も十分に採った後、妹さんと同じ昼間の1,2時間だけですよ」
「はい」
やがて医者や看護婦が出て行ってから、時計を見て立ち上がる香里。
「ちょっと電話してくるわ、休んでて」
「一緒じゃないと嫌じゃないのか?」
やっと椅子から体を起こし、立とうと頑張る祐一。
「聞かれたら恥ずかしいし、また泣いちゃうかも知れないから」
「もう恥ずかしがるような仲じゃないだろ、それにこんな時だ、泣いても恥ずかしくない」
「えっ?」
そのセリフで、香里の方が顔を赤らめる。
(そっか、もう隠し事する関係じゃないんだ)
正式に付き合い出した訳でもなく、交際が続いてゴールインした訳でもないので、今ひとつ実感が湧いてこない。
「でも、他の友達にも電話したいから、この時間ならまだ家だと思うし、女同士の話もあるから聞かないで」
「そうか、じゃあ、気を付けてな」
「ええ」
祐一は選択肢を誤った。
「はあっ!」
パンパンパンッ!
電話コーナーで、自分の両頬を叩いて気合を入れる香里、やはり何か仕出かすつもりらしい。
『はい、*HK **放送局です』
「すみません、**部の○○さんをお願いします、次の日曜の取材の件でお話が」
そちらのご用件だった。
『しばらくお待ちください』
電話が転送される
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