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川澄先輩とお話してた、なんて知れたら」
そこまで言って、二人が絶交しているのを思い出す。
「何よ、名雪が好きなのって、貴方じゃない」
今日はよくよく、誰が自分を好きなのか、別の女から指摘される日だった。
「あの川澄って人もそうよ、「あたしは祐一の恋人の姉です」って言ったら、嫌な顔して横向いちゃったじゃないっ」
自分に責任の無い所で、どんどん香里の機嫌が悪くなって行く。
「そう言えば名雪が小学校の頃も、こっちに遊びに来ても、すぐどこかの知らない女の子と友達になって、毎日置いて行かれたって言ってた」
「そうだったかな? 覚えてないぞ、近所の男の子の間違いじゃないか?」
丘や森を探検したり、危ない場所に行くなら、女の子の名雪は足手まといになる、7年前の記憶は無いので慌てる祐一。
「そう、貴方ってやっぱりそう言う男なのよ、前の女なんか簡単に忘れられるんでしょ」
再び胸倉を掴まれ、凄い目付きで睨まれる祐一。
「明日には「栞って誰?」って言うつもり? 名雪とはどうだったの? まさか栞と二股かけてたんじゃないでしょうねっ!」
藪を突付いて蛇を出す、香里は短く切った髪を蛇のようにくねらせ、祐一は石になりそうになった。
(私は貝になりたい……)
何故か古いドラマの題名を思い出し、がっちりと口を塞いで、何も言わない貝になりたいと願う祐一だった。
「どうなのっ!」
「ほらっ、アイスクリーム溶けるぞ」
「あっ!」
垂れて落ちそうなアイスが視界に入り、今の香里の最優先事項を指摘すると、ようやく窮地を逃れる事ができた。
「なあ、2月に栞と会えなくなってから、俺、何日も休んでただろ?」
「さあ、私も休んでたから」
二人とも似たような状態だったらしい。
「何日か何も食べないで部屋に篭ってたら、鍵を掛け忘れた時に名雪が入って来たんだ」
「そこで無理矢理襲ったのね」
「そうっ、嫌がるあいつを押し倒して、折って畳んで裏返して、って違うだろっ」
祐一はノリツッコミを覚えた。
「あの時は、もう栞にはずっと会えないと思ってた。 俺が好きになった子は、みんな死ぬんだって思ってた」
「…………」
恋人と姉妹で少し違ったが、2月頃は香里も似たような事を考えていた。
「でも名雪は俺を抱き締めて「だいじょうぶだよ」って、「ふぁいとっ、だよ」って言ってくれたんだ」
「そう……」
「思わずしがみ付いちまったけど、あれは気の迷いだった。あいつは許してくれないかも知れないけど、普通、従妹同士はだめだよな」
法律上の問題より、世間の常識は許さないはずだった。
「じゃあ、あたしも気の迷いなんでしょっ、明日にはお別れ? 帰る時「もう終わりにしよう」って言うつもりなのっ?」
また声を荒げて掴み掛かるが、祐一は穏やかな表情で香里を受け止
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