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KANON 終わらない悪夢
09
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き、子供のように泣きじゃくっていた。

(さよなら、名雪)
 もう一人も、例え自分が死んでも、悲しまれるより嫌われる方を選んだ。きっと名雪なら、死んだ時に全て許してくれるだろうと信じて。
「もうやめろっ」
 顔を押さえて泣く香里から受話器を取り上げたが、すでに回線は切れていた。
「くそっ」
 一旦電話を切り、もう一度ダイヤルする。
「いやっ、名雪とは話さないでっ!」
「秋子さんと話す、おまえら、こんな時に何やってるんだ」
「やめてぇ、いやぁ」
 縋り付いて泣く香里に阻まれ、電話はできなくなった。
「わかった、分かったから、そんなに泣くなよ」
 祐一も、ようやく自分のした事の重さに気付き、あの家族や栞には、もう会えないかも知れないと思い始めていた。
(名雪、秋子さん)

 それからしばらく、肩に顔を埋めて泣く香里を抱き、短くなった髪を撫でながら、その場で落ち着くのを待つ祐一。
(誰も来ないな)
 これだけの騒ぎを起こせば、すぐに看護婦が飛んで来そうなものだが、ここでは日常茶飯事なのか、誰も咎め立てしなかった。
(いつもの事なんだろうな)
 よく見ると電話台にも床にも、拭っても消えない涙の跡が、幾つも、幾つも残っていた。
(栞も、ここで)
 栞、香里、過去の患者、様々な事に思いを馳せて涙する祐一、その雫はやがて香里の頬にも届いた。
「……祐一?」
「馬鹿だな、あんなにはっきり言わなくても良かっただろ」
「だって」
「俺なんかよりずっと付き合い長いんだろ? 仲直りできないのか?」
「貴方が原因なのよ、どうやって仲直りするの?」
 ザシュッ!
「うっ」
 鋭いツッコミで、刺されたような痛みを感じる祐一。
「お、俺なんて、そんな大したもんじゃ無いだろ? 女同士のプライドってやつか?」
「いいえ」
 すっかり泣き止んで、上から見下ろすように顔を近付ける香里。
「友情とか、家族の絆まで捨てる程じゃないだろ? 今朝、名雪にはもう終わりにしようって言ったし、それに」
 威圧されるように、次第に言葉が弱くなって行く、そこで香里は、祐一の言葉を遮るようにこう言った。
「違うわ、貴方がいれば何もいらない。家族だって、友達だって、私達の邪魔する奴はみんな殺してやるっ」
 さっきまで泣いていたはずの香里は、恐ろしい表情で祐一を見下ろし、ガッチリ両肩を掴んで離さなかった。
(危ない、もう少しで、「お前とも終わりにしよう、だから名雪と仲直りしろよ」って言う所だった、今のこいつなら俺が終りになる)
 もちろん、祐一がそう言いそうな気配を察し、極太のクギを刺しておいた香理。現在、余命3ヶ月で怖い物無しの香里ちゃんなら、心身喪失状態で、包丁フェンシングでも、窓からの道連れダイビングでも、お〜るおっけ〜だった。
「ねえ
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