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ず普通の質問で切り返す名雪、しかしそれは、昼間聞く事もできなかった禁句。
「もう、だめみたい」
『えっ!』
「ごめんなさい、あの約束、守れそうにないわ」
名雪にも、香里は百花屋に行ってイチゴサンデーを食べる、たったそれだけの約束が守れないのだと分かった。
『どうしてっ?』
「あなたにも分かったでしょ、あたしと栞が同じ病気だって」
『うそ……』
「持って、後3ヶ月だって」
『そんなっ、やだよ〜〜っ』
「仕方ないでしょ、わがまま言わないで」
泣き出した名雪に、まるで子供を諭すように言っては見たが、言葉の最後は涙で詰まってしまった。
『やだー、香里っ、しんじゃやだーーー』
「何よ、貴方が泣いてどうするのよ、しっかりして」
先にパニックに陥った名雪を、病人の香里がなだめる、奇妙な光景が展開されていた。
「うえ〜〜〜〜ん」
「ぐすっ、うっ」
しばらく受話器を持ったまま、泣いていた二人だが、やがて香里から、何かを決心したように切り出す。
「でもね、帰り際、栞が言ったの、「祐一に抱かれれば治る」って」
『えっ?』
その言葉で、名雪にも先程の違和感の理由がわかった。
『そんな、まさか香里?』
「そうよっ、あたし、祐一に抱かれたっ」
涙に枯れたボロボロの声で、やっとそこまで言えた香里。
『……それは、病気が治るから? それとも』
永い沈黙の後、ようやく名雪も口を開いた。
「好きだからっ、ヒック、自分でも知らないうちに好きになってたからっ」
『でも、栞ちゃんと結婚させようとしてたじゃないっ』
「それは、祐一を諦めるため。二人が結婚したら諦められたはずだった。グスッ、でも、もう戻れないっ、栞と家族でいられなくても、貴方と友達でいられなくなっても、祐一は諦めないっ!」
香里は例え病気が治っても、名雪と二人で百花屋に行くつもりなど無かった。
そこで名雪は無言で電話を切った。病気になって弱っている親友を、口汚く罵りそうになったから。
「うっ、えへっ、うああ〜〜〜〜!」
受話器を置くと、その場に座り込んで泣き出す名雪。
「どうしたの? 名雪? 名雪っ」
(がんばって生きてって言ってあげられなかった、それでも一緒に百花屋に行こうって、言ってあげられなかった)
病気で親友を失うかも知れない悲しみ、自分と同じ男が好きで、その男に抱かれたばかりだと告白され、親友を失った悲しみ、名雪には泣く事しかできなかった。
「お母さんっ」
「何があったの? 言ってみなさい」
(祐一にも何も言えなかった、病気の香里を置いて帰って来て、なんて言えなかった。 でも香里が怖がらないように、傍にいてあげてなんて)
余命数ヶ月と宣告され、弱りきった状態とは言え、祐一は香里を選んだ。自分を責める名雪は秋子にしがみつ
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