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ねえ〜〜)
今度は自分のモノマネを聞いてしまったが、さすがに男の声は無理だったらしい。
バキャッ!
しかしまた、受話器の向こうでは、何かが破壊される音が聞こえたような気もした。
『これからお母さんが着替を持ってそっちに行きます、最初は不便でしょうから、泊まって行くそうです』
「来ないで」
『えっ?』
「これから朝まで、ずっと二人でいるの、邪魔しないで」
『祐一さんに迷惑です、しつこい女は嫌われますよ』
「あたし、もうすぐ妊娠するわ。さっき祐一と約束したの、もし10ヶ月持ったら子供産むって、それで女の子だったら香里って名前にするの」
ベキッ! バキッ! ドガシャッ!
受話器の向こうで、盛大に何かが破壊される、ものすごい音が聞こえたような気がしないでもなかった。
「祐一とだったら、私達みたいな弱い子供は生まれないんでしょ? だからあたしが生きた証を残すの、あたしが持たなかったら、母さんに育てて貰おうと思ってるの。 代わって、そこにいるんでしょ」
栞の隣で「声を聞かせて」と言っている母親の悲痛な声が聞こえた。
『…はい』
それからしばらく、母親と何か話していた香里。
「ええ、そうよ、元気になったわ、だから来ないで」
ごそごそ、カチャカチャ、ゴトゴト
隣では、母親と代わった栞が冷静さを取り戻し、さっき壊した物を簡単に片付けているような音が聞こえたような気がした。
「母さんだって知ってたんでしょ、こんな体の弱い子供が産まれるかも知れないって」
そこで、どうしても行くという母親を来させないため、こう言った。
「後3ヶ月しか無いんでしょ、だったらわがまま言わせて」
電話の向こうで、母親が泣いている声が聞こえた。
「いいのよ、今なら分かるわ、好きな人とだったら子供が欲しくなるって、だから私も死ぬ前に産むの。その後、あたしが持たなかったら代わりに育ててくれる? 女の子だったら香里って名前にするの」
母親の泣き声が、さらに大きくなった。
「泣かないで、でも妊娠する時ってどうするの? 避妊の方法は教わったけど、そのままじっとしてればいいの? 動き回ったり、何回もしても大丈夫なの?」
コケッ! ズザザー!
電話の向こうで、まるで母親が前のめりに倒れ、「あゆスライディング」でもしているような音が聞こえたかも知れない。
「冗談よ、うん、大丈夫だから、栞がこっちに来ないように閉じ込めておいて、じゃあ明日」
自分が話し終わると、栞と祐一を喋らせないよう、電話を切ってしまう香里。その前に「お母さん、何するのっ? 嫌っ、私がお姉ちゃんの所に行… ゴキッ! ドサッ」と言う、まるで母親が栞を締め上げ、昏倒させたような音が聞こえたのは、気のせいに違いない。
「ふ〜、宣戦布告したら、何だかすっきりしたわ。隠
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