暁 〜小説投稿サイト〜
KANON 終わらない悪夢
07
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 それから、部活がある名雪と北川を帰らせ、祐一は「栞のそばにいてやるから」と言って病院に残った。
「祐一?」
 帰り際、何か言いたげな名雪。
「心配すんなって、香里は俺が見ててやるから」
「うん」
 どちらかと言うと、名雪はそれを心配するような、複雑な表情を返した。

 1階で祐一が二人を見送っていた頃、検査の合間を見て、一人で病室に入る栞。
「お姉ちゃん、具合はどう?」
「そうね、左手だけは動くけど、他は力が抜けたみたい」
 両手を握ったり開いたりしてみるが、右手や足は思うように動かない。
「それは、祐一さんが触った手だからですよ」
 左手は心臓マッサージしている時、胸に触れないよう、土台にされた手。
「え?」
「心臓だってそうです、私が倒れた時は入院して何日も苦しかったのに、お姉ちゃんは座って話もできるでしょ」
 それは自分と条件が同じなのに、祐一が触れた部分は違う、と言う意味でもあった。
「じゃあ、あたしも一年持たないって事ね、貴方と同じなんでしょ」
 声が震えるのを押さえながら、具体的な年数まで出して、自分の寿命を聞き出そうとする。
「いいえ、お姉ちゃんは祐一さんが治してくれます。さっきも言ってたの、「キスで具合が良くなるなら、人口呼吸もしてもらえば良かったですね」って」
「やめてっ、気持ち悪い」
「前にも言ったでしょ? 私が治ったのは、祐一さんと愛し合ったからだって」
「そう、良かったわね、好きな相手がいて、あたしの周りにはそんな男いないわ」
 少し芝居がかった調子で、話をはぐらかそうとする香理だったが。
「まだそんな事言ってるの、お姉ちゃんが好きなのは」
「やめなさいっ!」
 その言葉の続きは聞きたくない、と言いたげに怒り出す。
「確かに貴方の恋人だし、名雪の従兄弟だから嫌いじゃない。だけど人間なんてすぐに死ぬのよ、それは貴方が一番よく知ってるはず。あたしももうすぐ死ぬわ、だから愛だとか恋なんて大嫌いなのよっ」
 自分を抱くように震えながらも、忌々しい体を呪う。
「女って、異性の匂いを嗅いで何秒かで、自分に無い免疫を持っているかどうか判断できるそうよ、だから私達が祐一さんに引かれたのは本能かも知れない」
「それはこれから産まれる子供の話でしょ? あたしの病気がどうにかなる訳じゃない、母さんだって分かってたくせに、こんな弱い子供ができるかも知れないって!」
 遺伝病は、両親とも素養があった場合、25パーセントの確立で遺伝するが、100パーセント近く伝わる悪質な物も存在する。
「でも祐一さんだけは違うの、さっきお母さんも手を握っただけで、症状が軽くなったのよ」
「なっ、本当なの?」
「ええ、後で聞いてみて、何秒か強く握っただけなのに、今日から薬を減らして様子を見るそうよ。それだけで治る
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ