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、元々色白なんだと思ってた」
「えっ?」
その言葉に一瞬驚いたようだが、すぐに元の調子に戻る。世間には、病院の薬の匂いが好きな人間と、漂う死臭を察知するのか、忌み嫌う者がいた。
「ふっ、ふふっ、貴方らしいわね。あ〜あ、単に鈍かっただけか、何だか損した気分」
「損なのかよっ」
また少し目を出し、祐一を観察し始める香里。
「でも、結果オーライって感じかしら? また栞とも向き合わせて、家族に戻してくれた。また話せるようになって、二人で遊んだりもした、でもそれも終り」
「終わりじゃないだろ、これからだってずっと」
「違うの、姉妹でもまさか男の趣味まで同じなんてね…… 仲の良かった美坂姉妹も、今度こそ終わりって意味」
「……」
「最初は栞に貴方の事を教えたくて見てたはずだった、その日に何があったかも全部話してた」
その頃から、授業すら暗記できる香里の記憶力は、祐一で一杯になった。
「でもノートにスケッチまでして見せたら、あの子が先に気付いたの「祐一さんの事が好きなんですね」って」
さっき栞の機嫌が悪くなったのは、この時の気持ちを思い出したせいらしい。
「違うって言っても遅かった、あたしがこんなに鈍感だったなんて…… 人の事はすぐに分かっても、自分の気持ちはずっと押さえてたから、栞がいるから、自分だけ幸せになろうなんて考えもしなかった」
その状況を思い出し、大切な妹との会話が再び途切れ、険悪なムードになった時と同じ、不快な表情になる。
「だから今度は、貴方を嫌いになろうとした。イヤな所を見付けて、下品で嫌らしくて乱暴な男だって思おうとしてた。でも意識したらするほど気になって、見ないようにしたら余計に見てしまってた……」
香里は男に免疫が無かったので、「勘違い」と言う言葉を知らなかった。
「嫌な奴だって思えたはずだった、もうすぐ大嫌いになれたはずなのに、うっ、くっ」
そこまで言い終わると、また布団の中で泣き始める香里。
「おい……」
気丈な女の弱い姿を見せられ、心を鷲掴みにされた祐一。
それから暫く、布団から出ていた頭を撫で、嗚咽の声が収まるのを待っていると、心の準備が出来たのか、香里が口を開いた。
「今度は貴方の番よ、教えて」
「栞の時には何て言ったんだ?」
「貴方は…… 次の誕生日まで生きられないって」
「そうか」
深呼吸して息を整え、まるでこれから自分が宣告を受けるように緊張する。
「後、ゴホッ、ゴフッ、……後、3ヶ月らしい」
人は言いたくない事を言う時、喉が拒否するらしく、咳き込みそうになったが、ようやくそれだけ言い切った。
「そう……」
永遠にも思える時間が流れた。なぜ自分がこの役なのか、なぜ香里が死ななければならないのか、そればかり考えていた。
「ねえ、もうすぐ死ぬ
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