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の、普通の患者がいる階で、夜中に泣き叫んで苦しむ患者がいたり、死体が乗ったベッドをゴロゴロ押して行く訳にいかないでしょ? だからどこの病院でも、こんな所があるんだって、栞と同じ部屋にいたおばさんが言ってた」
ここは古参の入院患者から「安置所」とか「霊安室」と言われ、もう永くない患者が来る場所だった。
「やめろよ、病院の怪談じゃあるまいし」
「そのおばさんも、ここに来て帰って来なかった、それに2月、栞はここに入れられたのよ」
その家族を同じ所に入れる病院に問題はあったが、栞は退院したので最悪の選択とまでは言えなかった。
「じゃあ、出られるんじゃないか、もうすぐ退院する患者もここなんだろ」
「いいえ、それにこの階だけ面会時間って無いの、家族は泊まれるし、警備の人もここだって言ったらすぐ通してくれるわ、急変したか死んだかなんて、わざわざ聞かないの」
「…………」
全てを知っている香里には、掛けてやる言葉すら無かった。
「無理しないでいいのよ、ねえ、私は後何ヶ月、それとも何週間?」
最初に想像していた1年から、検査の内容、病室の移動で自分の寿命が短いと悟った香里。そこで両親や栞まで隠した事を、唯一答えてくれそうな相手に聞いてみた。
「何だ? 妊娠でもしたのか」
さすがに本当の事は言えず、取りあえず冗談で流そうとしたが。
「冗談言わないでっ! あたしは後どれだけ生きられるのっ!」
そう言うと香里は、布団をかぶって、自由に動く左腕で両目を隠した。
「栞に、聞いたのか?」
「だめよ、あの子嘘つきだから」
「どうして?」
「あの子「お姉ちゃんは祐一さんが治してくれます」なんて言うのよ、自分が治ったからって、あたしに効くはず無いのに」
とうとう香里のモノマネを聞いてしまった祐一、姉妹だけに結構似ていた。
「じゃあ、あの変な話も聞いたのか」
そう言われると、ビクッと動いて、腕をずらして祐一の様子を伺う香里。
「あの子に頼まれたの?」
「まあな」
「襲うの?」
「バカ、襲わない」
「わかったわ、じゃあ、「してっ」」
そう言うと布団を頭まで被って、中でゴソゴソし始める香里。
「してって? 何してるんだ?」
「見ないでっ、電気も消してっ、それに…… すぐ済ませて」
声を震わせながらも、ベッドの中で下着を脱いでいるらしい。
「いくらなんでもここじゃ無理だろ」
ムードもへったくれも無い香里の要求に、引いてしまう祐一。
「栞が看護婦に言って帰ったらしいわ、「(好きな人と)最後に望みを叶えさせてやって下さい」とか何とか、だからこの部屋はあたしだけで、検温にも来ないのよ」
「だからって、それは無いだろ」
「どうして? 「したら」治るんでしょ、後1ヶ月も生きられないなら、出来る事は何でもしてみるわ、痛いっ
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