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んだから、お姉ちゃんも手を繋いで、体が動かない所を触ってもらって」
「嫌よ、あんないやらしい手付きで体中触られるなんて。その上あなたと比べられて、「あたしの方が胸が大きい」とか、「ウエストが締まってる」とか、「お尻も小さくて足が長い」なんて思われたら嫌だわ」
さり気なく自慢し倒す香里、母親の回復が心の支えになったらしい。
「やっと、お姉ちゃんらしくなったわね」
そう言いながらも、額に少し血管が浮いている栞。
「でもそれだけじゃ足りないの、完全に治るには私と同じで、祐一さんと愛し合うしかないのよ」
そう言うと、また妙な目付きになる栞。親子ともども天使の人形に操られているとは言え、まるで祐一の信者のようだった。
「バカね、何を言い出すかと思ったら、あなたの恋人とそんな事できるわけないでしょっ」
先程から盛んに「ソレ」を勧めているように思えたが、香里としても、まさか本気で口にするとは思っていなかった。
「私なんかを気にしてくれるの? そんなの後から考えましょう」
以前、無視されていたのを思い出したのか、微妙な言い回しで答える栞。
「だ、だから、後何ヶ月なの? あなたの時は教えたでしょう、今度はあたしの番よ、教えてっ」
栞の視線から逃げ、何とか話題を変えようとする香里。
「大丈夫、今日にでも祐一さんと愛し合って。看護婦さんにもお願いしておくわ、「好きな人と(最期の)望みを叶えられますように」って」
自分の言いたい事を言い終えると、立ち上がって出て行く栞。
「待ちなさいっ、栞っ、栞っ!」
まだこの時点では、祐一も香里の手を握ったり、足をマッサージしていればいいと思っていたが、全ての検査が終わると、香里は別の階に移された。
「じゃあ祐一さん、お姉ちゃんをお願いします」
「ああ……」
「私達は一旦帰ります、必要な物が有りましたら後で持って来ますから」
病院慣れしているのか、湯のみにティッシュ、ウエットティッシュ、洗面道具にタオルなど、必要な物は全て揃っていた。
(あれだけ取り乱しても、母親ってしっかりしてるんだな、いや、来るまではそんな重症なんて知らなかったんだろうな)
「娘をお願いします」
病室の前で深々と頭を下げられ、お願いされてしまった祐一、大事な娘を二人共ヤられちゃう父親の心境は計りかねた。
「はい」
そして普通なら居残る家族が帰り、祐一と香里だけが取り残された。
二人だけになった夕暮れの病室、ここは本来2人部屋だったが、隣のベッドは空いていた。
「ねえ、相沢君」
「何だ?」
手は繋いでいたが、沈黙に耐えかねたのか、ベッドに横になったまま話し出す香里。
「ここね、そのエレベーターに乗って、スイッチを押したら、誰にも会わないで下まで行けるの」
「へえ、便利だな」
「違う
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