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し方を見れば、祐一でなくても、「香里は助からないのでは」と思えた。
「お母さん、お母さんっ、この方が相沢さんよ、私を「治してくれた」人よ」
栞の言い回しに少し違和感を覚えたが、母親の目の色はそれ以上だった。
「ああっ、貴方が栞をっ、もう一度娘をっ、香里を助けてやって下さいっ、お願いしますっ!」
祐一の手を両手で握って、床に膝を着いて懇願する母親。
(何だ? 何言ってるんだ?)
目の前で何が起こっているのか理解できない祐一。
「お母さん、相沢さんには私からお願いするから」
そう言って母親を起こし、椅子に座らせるが、手を握ったまま祈るようなポーズは変えようとしなかった。
「すみません祐一さん、お母さんが辛そうだったので、どうして私が治ったのか話してしまいました」
「え? ああ」
秘密の治療をした覚えは無かったが、こんな母親の姿を見れば、祐一とて否定する言葉は出なかった。
「何を言ったんだ?」
小声で栞に話し掛け、話を合わせようとする。
「祐一さんに会ってから、お別れするまで、全部です」
「は?」
まさか、あ〜んな事や、こ〜んな事まで、包み隠さず言ったのでは無いかと、不安になる祐一。
「自分の体ですから、小さい頃から病気だったから分かるんです、生きる希望だとか、誰かの愛情では奇跡なんて起こらないって」
涙ぐんで、以前の出来事を思い出しながら話す。
「でも最後の一週間の始まる前、噴水の前で私達…… キス、しましたよね」
それが原因とでも言いたげな顔をする栞だったが、横では父親が聞いていた。
(うっ、マズい)
しかし、父親もすでにその話を聞いていたらしく、それが奇跡の始まりだと言いたげに、目を細めて頷いていた。
(いいのか?)
「あの後の私、凄く元気でした、まるで命を吹き込んでもらったみたいに。それから学校へ行ったり、お弁当を作ったり、だったらさっき、お姉ちゃんにも人口呼吸してもらえば良かったですね」
冗談でも言ったつもりだったのか、いつもの寂しそうな表情のまま笑う。
「それに、祐一さんの部屋で、愛し合ってから」
太いお注射をした日らしい。
(うっ!)
また嫌な汗を流す祐一だったが、父親は黙って聞いていた。
(これもいいのか?)
「あの日からずっと、高い熱が出ました、まるで体が燃えるみたいで、でも苦しくは無かったんです、私の中の弱い私が消えて行くようで、こうして強い私が生き残ったんです」
もうすっかり目の色が違って来た栞も、母親と同じ目に変わっていた。
「ですから、お姉ちゃんにも「私と同じ事」をしてあげて下さい、お願いします」
「何言ってるんだ?」
愛し合えば病気が治る、と信じている栞が理解できないのと、女としてそれでいいのか聞きたかった祐一。
「その、恋愛すると体
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