06
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
部活もサボッちゃった」
「土産はないぞ、貧乏学生だからな」
生きていた香里を見て、ようやく落ち着いた3人だが、見舞いの品を用意する余裕すら無かった。
「え〜、アイスクリーム食べたいな〜」
やはりこの病気は、「夏冬関係なくアイスクリームが食べたくなる病」らしい。きっと喉が熱を持って腫れ、普通の食物は受け付けず、水を飲んでも痛みが走るが、脂肪分を含んだアイスクリームなら親和性が良く、養分もとれる…… のかも知れない。
「バニラだな」
栞の症状からバニラと予想する祐一。
「イチゴよね」
自分の趣味に合わせようとする名雪。
「案外渋く、あずきか抹茶とか?」
狙いすぎの北川。各人勝手な予想をしている時、初老の男性が入って来た。
「あっ、おじさんっ、こんにちわ」
「ああ、名雪ちゃん、北川君、久しぶりだね、じゃあ貴方が相沢さんですか?」
「はい、始めまして」
そこで、次の日曜に挨拶に行くはずだった、栞と香里の父親に出会ってしまい、少し気恥ずかしくなる。
「この度は、栞だけでなく香里まで、何とお礼を言っていいやら」
「いえ、俺は栞さんの薬を使っただけで何も」
「あっ、アイスクリームあった?」
父親の手にある袋を見つけ、挨拶を中断させる香里。
「ああ、まだ早いから、少ししか無かったぞ」
「うんっ」
奪い取るように受け取ると、早速ふたを開き食べ始める。
(やっぱり……)
祐一はある確信を抱いた。
「昼にあれだけ食べたのに、どこに入るんだ? 食事制限とか無いのか?」
「うるさいわねっ」
折角のバニラアイスを邪魔しようとする相手を、鋭い目付きで睨む香里。
「そうだな、先生に聞いてみようか、ちょっと待ってなさい」
父親にまでアイスクリームを中断させられそうになり、香里の取った行動とは?
「お父さんっ、この男が私の胸を触ったのよ、私が倒れたのをいい事に何度も何度も、それも栞が見ている目の前で」
胸を隠しながら祐一を指差し、邪魔者を排除しようとする香里、アイスのためなら人格さえ変わるらしい。
「何て事言うんだ、命の恩人に」
「それに、もう少しで、「キス」される所だったわ、栞や名雪がいなかったら、今頃どうなってたか」
さすがにこのセリフには、父親の表情が変って、その周囲だけ温度が下がって行く。
(雰囲気が栞に似てる)
ちょっと怖い考えになった祐一。
「いえ、心臓マッサージは俺が、でもすぐにこいつと交代しました。それで人口呼吸は栞、さんにしてもらおうと思ったんですけど、酸素ボンベがあったんで(汗)」
名雪を盾にして、懸命に言い訳を開始する祐一。
「緊急事ですから、気にしないで下さい」
娘二人の恩人なので弱気だったが、栞の父親だけに、怒ると何をしでかすか分からない。
「こいつっ、顔色
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ