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KANON 終わらない悪夢
05
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の前で胸を触らないで」と言っていた。
「ええいっ」
 手近にあった「香里の左手」を胸に置き、その上からマッサージを続ける。
「これなら触ってないだろ」
 栞の様子を見てから、また首を縦に動かしたので、心臓を押し続ける祐一。
「1、2、3、4、5、深呼吸しろ」

 その頃、校舎の影では。
「はああっ!」
 見えない何かに向かって、木刀を振り下ろす舞がいた。
「うぐぅ〜〜っ!」
 魔物に防いで貰い、頭は殴られなかったが、かなりウルウル来ているあゆ。
(あれ、見付かちゃったね、へえ、あの子がそうなんだ)
「…そこで何してるの?」
(さあ? それより彼の友達が倒れたみたいだよ、君の力で助けてあげたらどうだい?)
「何ですって?」
 初めて魔物から話し掛けられ、驚いている舞。
「うぐぅっ、あの人怒ってるよっ、凄く怒ってるぅ」
 木刀で殴られそうになった上、殺気の篭った視線だけでも死にそうなあゆあゆ。
(じゃあ今日は引き上げようか、後はお願いできるかい?)
(ワカッタ)
「待てっ、お前は何者だっ」
(ボクかい? ボクは天使だよ、またねっ)
「待てっ!」
 ブウンッ!
 追いかけようとした所を、旋風が薙いで行った。それをかわす間に、天使の人形とあゆはどこかに消えていた。

 中庭に戻る…
「香里ーーー!」
 そうこうしている間に名雪が戻って来た。
「祐一っ、香里はっ?」
 泣きながら親友の様態を気遣う名雪。
「大丈夫だ、栞が凄い薬持ってたからな」
 普通、他人の薬は使ってはいけないが、年齢も近い姉妹で同じ症状を示し、同じ薬で効果があった場合。
「美坂さんっ」
 少し遅れて、栞の家から預かったと思われる、小型の酸素吸入器のボンベを持って、保健医も駆け付けた。
「栞さんじゃ、なかったのね」
 保健医の言葉で、周りの者も二人が同じ病気だと気付き、本人も死刑宣告でも受けたような気分になった。
(お姉ちゃん、やっぱり私と同じ)
 まるでタイマーでスイッチが入るように、親兄弟で同じ年代に発病する病気、それは遺伝病と呼ばれた。
(後、持って1年…… か)
 香里も諦めたような表情になり、大きなため息を漏らした、こうして祐一の周囲から、少しづつ奇跡にほころびが見え始めた。

 ブウンッ! カキンッ!
 今は木刀しか持っていないので、魔物には傷を付ける事もできない舞。
 ブウンッ! ブウンッ! ヒュッ! ザシュッ!
「…どうしたの?」
 舞が飛び退いて校舎の影から出たとたん、全ての攻撃が止んだ。
「影から出られないの? ここまで来て見なさいっ」
(グルルルルッ)
 やがて一匹、一匹と気配が消え、魔物達もどこかに消えて行った。
(…誰が倒れたの? 栞と言う子?)
 魔物の気配が完全に消えた
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