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2ヶ月前…
栞との別れの後、すっかり落ち込んで、自分の部屋に篭っていた祐一。
コン、コン
静まり返った部屋にノックの音が響く。
「ご飯だよ祐一、ここ置いとくから」
いつまでも出て来ない祐一を気遣い、部屋の外に食べ物を載せたトレイを置いて行く名雪。
「……食べたくない」
まるで7年前と同じように、何も食べず、ベッドの上でひざを抱えてうずくまる。
「どうしてっ、食べないと死んじゃうよっ」
そこで、今一番言ってはならない言葉を使ってしまい、ハッとするが、中からは何の反応も無かったので、思い切ってドアノブを回して見た。
(開いてる……)
トイレから戻った時に鍵を掛け忘れたのか、ベランダからも入れなかった祐一の部屋の扉が開いた。
「入るよ」
「…………」
返事が無いので部屋に入る名雪、これも7年前によく似ていた。
「どうしたの? しっかりして、祐一っ」
「駄目なんだ」
「えっ?」
「俺のっ、俺が好きになった子は、みんな死んじまうんだっ、みんなっ、みんなっ!」
目の前で男の子が泣く所を見て、母性本能をくすぐられる名雪、その大きな胸の奥で、何かがキュっとなった。
「そんなことないよ、わたしやお母さんは、どこにも行ったりしないから、祐一を一人にはしないよ」
「嘘だっ! あの子の時と同じじゃないかっ! また何もできないでっ…… あの子って誰だ?」
昔と同じような体験をして、封じていた記憶が戻りそうな祐一、しかし、あゆの事まで思い出せば、心が壊れてしまうに違いなかった。
「だめだよっ、思い出さないでっ」
祐一が壊れるのを恐れた名雪は、泣いている祐一をギュッと抱き締め、胸の中に顔を埋めさせた。
「名雪……?」
「ほら、こうしてると落ち着くでしょ、心臓の音が「とくん、とくん」って聞こえるでしょ」
「……ああ」
「わたしも悲しい時、お母さんにこうして貰ったんだよ、きっと栞ちゃんもだいじょうぶだから、祐一も元気出して」
ほえほえパワーで心の傷を癒している名雪。
「だいじょうぶ?」
「うん、ふぁいとっ、だよ」
魔法の呪文?で記憶を封印しているなゆなゆ、あゆが木から落ちた時も、こうして忘れさせたらしい。
「名雪……」
しかし栞の記憶が曖昧になった今、健康な高校生の反応と言えば。
「名雪っ!」
そのまま背中に手を回し、たわわに実ったブツにむしゃぶり付く。
「あっ、だめだよっ、お母さんに怒られちゃう」
名雪的には、秋子ちゃんに怒られなければ構わないらしい。
「……俺が好きになったら、お前も死ぬから? そうなんだな」
「えっ?」
まだ混乱しているのか、泣きながら離れようとする祐一。
「違う、違うよっ、わたしならだいじょうぶだよっ」
そう言って、もう一度祐一を引き寄せ、胸の
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