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KANON 終わらない悪夢
03
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入りしてしまう名雪。
「まあ、この子ったら。でも私は、二人がずっと、あのままでいてくれたら良いと思っていました」
「すみません」
「仕方ありませんよ、それは祐一さんが決める事ですし、名雪はこの通りですから」
「くーーーー」
 よだれに涙と鼻水も垂らした名雪の顔は、「百年の恋も冷める」と表現するのが適切だと思われた。
「あの、香里の妹は知ってますか? 1月の終わりに連れて来た子です」
「ええ、名雪からも聞きましたよ、祐一さんのおかげで病気が治ったそうですね」
「そうでもないですけど、あいつは俺が付いていてやらないと」
「分かってます、名雪はまかせておいて下さい、朝食ができてますから、食べてから行って下さいね」
「はい……」
 居心地の悪さに、その場から逃げるように離れ、自分の為に用意されたハムエッグとサラダを平らげ、コーヒーを飲み干すと、トーストは食べず学校へ向かった。

「名雪、起きなさい」
「ゆーいち〜」
「貴方はそれでいいの?」
「くーーー」
 寝ぼけている名雪に、強烈な往復ビンタを食らわせる秋子ちゃん。
「キャッ! お、お母さん?」
 口の中に広がる、微かな血の味を味わいながら、自分を殴った相手を見上げる。
「起きなさいっ、もう闘いは始まってるのよ」
 そこには、いつもの秋子さんじゃない、秋子ちゃんが立っていた、多分「恋とは闘い」なのかも知れない。

 今日は荷物がいないので、時間には余裕があったが、通学路を走って行く祐一。
(許せ名雪、すみません秋子さん)
 傷付いた自分を優しく包み込んで癒し、もう少しで本当の家族になるかも知れなかった二人に、心の中で詫びる。
(でも、俺にはあいつが……)
 やがて前を歩いている、約束の相手を見つけた。
「お〜〜い、栞っ」
「あっ、おはようございます、祐一さんっ」
「おはようっ」
 通学路で栞と合流して、何気ない挨拶を交わし、同じ歩調で歩いて行く、こんな出来事の全てが奇跡だった。
「今日は名雪連れて来てないの、朝練だったかしら?」
 家と通学路が同じなので、姉も付いて来ていた。これも栞からすれば、「姉と同じ制服を着て、一緒に家を出て、他愛無いおしゃべりをしながら、同じ学校へ自分の足で歩いて行く」と言う、ささやかな夢の一つだと思えた。
「ああ、置いて来た」
「そう、従妹を見捨てて恋人を取った訳ね、こんな男って許せるの?」
 わざとそんな言い方をしていたが、祐一の決意を感じ取ったのか、昨日までの刺々しい言葉では無く、優しい話し方をしていた。
「ひどいですよ、わざわざ私に合わせてもらったんですから、ね、祐一さん」
 早速腕を組んで、周囲にも自分の運命の相手だと主張を始める栞。
「フンッ、男が出来た途端これね。 あ〜あ、どうして女って誰でもこうなる
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