巻ノ七十四 最後の花見その十
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「美味ですな」
「桜の香りがします」
「いや、桜の酒とはよいもの」
「これはのまずにはいられませぬ」
「では飲みましょうぞ」
「これより」
こうしてだった、彼等はふんだんに飲んでいた。そうして酒も肴も心から楽しんでいるとそこにだった。
「おお、来られたぞ」
「太閤様じゃ」
「太閤様が来られたぞ」
ここで多くの民達が言った。
「天下様が来られる」
「太閤様を見よう」
「是非な」
「おお、来られたか」
幸村も微笑んで反応した。
「ではな」
「はい、我等もです」
「姿勢を正してです」
「太閤様にお会いしましょう」
「これより」
十勇士達も応える、そしてだった。
彼等は姿勢を正して秀吉が来るのを待った、すると多くの武士や侍女達を従えた小柄な猿面冠者が来た。
まさに秀吉だった、秀吉は控える民達に笑って言った。
「よい、飲んで食って楽しめ」
「そうしてよいのですか」
「花を」
「御主達にも楽しんでもらう為に開いたのじゃ」
この花見をというのだ。
「だからな」
「では控えずに」
「このまま酒や茶を飲んでもよいのですか」
「左様ですか」
「そうじゃ、そして茶や酒が欲しくば」
そう思うならというのだ。
「好きなだけ飲むがいい」
「何と、では」
「下賜されて下さるのですか」
「酒や茶を」
「そうして下さるのですか」
「ははは、そうじゃ」
その通りだとだ、秀吉は民達に笑って答えた。
「だからこの花見くつろいで楽しめ」
「ううむ、そうされるとは」
「流石天下様」
「お心が広い」
「並の方ではないわ」
「御主達もじゃ」
秀吉は控える幸村達にも暖かい声をかけた。
「顔を上げい」
「はっ」
その言葉に応えてだ、幸村と十勇士は実際に顔を上げた。すると秀吉はその彼等に対してもこう言った。
「くつろいで楽しめ」
「そうしてよいのですか」
「今日は無礼講じゃ」
やはり笑って言う。
「存分に花見を楽しめ」
「それでは」
「そうじゃ、酒も茶も楽しんで」
そして、というのだ。
「何よりも桜を楽しむのじゃ」
「わかり申した」
幸村が一同を代表して応えてだ、そしてだった。
彼等は再び花見を再開した、秀吉は伴の者達と共に桜達の中を巡りそうして目を楽しませていた。花見は実に鷹揚でみらびやかなものだった。
この日幸村も十勇士達も花見を楽しんだ、だが。
屋敷に帰ってだ、幸村は夕食の後で十勇士達に問うた。その問うたことはというと。
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