巻ノ七十四 最後の花見その八
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「太閤様一代の家じゃったな」
「天下人としてな」
「それまででしたか」
「身内が少な過ぎる」
あまりにも、というのだ。
「元々な」
「ですな、それは」
「羽柴家の頃から」
「どうも少ないですな」
「おなごの方も」
秀吉の弟の秀長や姉妹達がいてもだ、彼にはそうした一族という者が元々少なかったのである。
「それではです」
「力が弱くなるのも道理」
「やはり一門衆は必要です」
「身内同士の争いもありますが」
あくまで家中がまとまってこそだ。
「源氏の如きは問題がですが」
「あの様な有様では」
身内同士で殺し合ってはというのだ、源氏はそうして殺し合った結果その血筋が完全に絶えた程である。
「しかしですな」
「まとまっていれば」
「やはり一門衆は多いに限りますな」
「そう思いますと今の豊臣家は」
「どうにも」
「お拾様がどうにかなればな」
まさにそれでというのだ。
「終わりであるからな」
「ですからどうしても」
「あの家は危ういですな」
「このことは否定出来ませぬな」
「うむ、あの家はな」
まさにというのだ。
「何かあればじゃ」
「それで終わる」
「そうした家だからこそ」
「力も弱い」
「そうなりますか」
「何かと助けてくれる一門衆がいなくては仕方がない」
天下を治めるには、というのだ。
「このことを補えるものではない」
「だからこそですな」
「豊臣家の天下は危うい」
「左様ですな」
「そうじゃ、そこまで考えると」
どうしてもと言う幸村だった。
「難しいのう」
「豊臣家の天下は」
「太閤様の後は」
「そうなりますか」
「うむ」
こうしたことを話した幸村だった、花見の前に。
そしてだ、こうしたことを話したその後で幸村は十勇士達を連れて花見に出た。主な家臣達も連れていたが。
ここでだ、家臣達は満開の何千本もの桜達を見て言った。
「いや、全く」
「全く以てですな」
「見事なものです」
「これだけの桜があるとは」
「ここまでの花見ははじめてです」
「はじめて見ました」
「そうであるな」
幸村は家臣達に応えて言った、彼もまた桜達を見ている。
「まさに天下の花見じゃ」
「はい、全く以て」
「古来ないまでのものです」
「これまでの花見とは」
「いや、我等もお供に呼んで頂き」
「まことに有り難うございます」
「礼はよい」
笑って返した幸村だった。
「一人でおるよりもじゃ」
「皆で、ですか」
「殿はよくそう言われていますが」
「だからですか」
「我等もお供に選んで頂き」
「共に、ですか」
「楽しむ為にな」
そう思ったからこそというのだ。
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