第三章
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「その時に言いなさい」
「酷いなあ。甥がもてなくてもいいんだ」
「だからもててから言いなさい」
ビールを飲みながら不機嫌な顔で言う。
「そんなことはね」
「言うなあ。じゃあ俺ナンパはいいや」
「泳ぐの?それじゃあ」
「ちょっとね。思いきり泳いでくるよ」
「準備体操はしっかりとね」
「うん、わかってるよ」
こう応えたうえでだ。博之は服を脱いでその下の水着、青いトランクスタイプのそれになって海に向かった。準備体操も忘れずにしてから。
その彼を見送ってからもずっとビールを飲み続ける麻里奈だ。そしてだ。
その日は夕方まで飲んだ。気付けば一ダース空けていた。フランクフルトだけでなく焼きそばやお好み焼きも食べていた。飲み食いして終わったのだった。
それでホテル、とはいっても普通のありふれた部屋のホテルの中でだ。旅行に出た時のジーンズとポロシャツ姿でだ。ちゃぶ台を挟んで向かい側にいる甥にこう言うのだった。
「で、これからだけれど」
「晩飯も食ったし何処に行くんだよ」
「飲むわ」
実に素っ気無く言うのだった。
「またね」
「って姉ちゃん昼滅茶苦茶飲んでたじゃないか」
「まだ飲めるわよ」
「だから飲むのかよ」
「そう。ニースじゃないから」
湘南だからだとだ。風呂あがりでもまだ酒が残っている顔で言うのである。
「もう飲むしかやることないから」
「何処のアル中なんだよ」
「だってね。今頃王子様みたいな男の子と楽しいアバンチュールを楽しんでたのよ」
「彼氏いないのに一時の浮気?」
「そう。楽しんでた筈なのよ」
「それが今湘南にいるからなんだ」
「そうよ。湘南なんて学生の頃から飽きる位来てるわよ」
それこそ何度も何度もだ。麻里奈にとっては本当に馴染みの場所だ。
だからだ。彼女は今はこう言うのだ。
「お姉ちゃんがあんたが湘南に行きたいっていうから来たのよ」
「だから夜も何処にも行かないんだ」
「そうよ。ここで飲むわよ」
とにかく飲むというのだ。
「あんたもさっさと寝なさい」
「夜にこそ楽しいっていうのに?」
「そう。夜の湘南は結構危ないわよ」
こう言ってだ。博之を寝かせようとするのだった。
「それこそゲームセンターとかに碌でもないのたむろしてるとか」
「コンビニにも?」
「夜はそうよ。特にこの季節はね」
「じゃああれかよ。昔懐かしいバリバリ夜露死苦なのがいるのかよ」
「湘南にはまだいるから」
横須賀やそうした地域にはだ。いるというのだ。
「そういうお兄ちゃん達に優しくされたい?」
「お姉ちゃんならいいけれどさ」
「お兄ちゃんはいいわよね」
「カツアゲされるんだよ
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