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ソードアート・オンライン 結城家の次男は両手剣使いで恋人は黒の剣士
絆の始まり
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イテムポーチから《リトルネペントの胚種》を取り出して渡す。

おかみさんは顔を輝かせ胚種を受け取る。お礼の言葉が連射されると視界左のクエストログが進行していく。

胚種をそっと鍋に入れたおかみさんは、部屋の南に置かれている長櫃(チエスト)に歩み寄り、蓋を開けた。長櫃から出てきたのは、古びてはいるが、初期装備とは段違いの存在感を放っている赤鞘の長剣を取り出した。俺達の前に戻ってくると再度のお礼と共に、剣を差し出してくれた。

「「ありがとうございます」」


呟いて、俺達はクエストの報酬《アニールブレード》を受け取った。両手にズシリとした重さが伝わる。スモールソードの2倍ぐらいの重さを感じた。
視界中央にクエスト達成のメッセージが浮かび、ボーナス経験値が加算され、俺のレベルは4となった。

俺達はもう殆ど動く気力などなく、キリトはアニールブレードをストレージに格納させ、俺はスモールソードを失ったためアニールブレードを装備して、クエストが完了したせいか疲れがどっと押し寄せてきて俺は椅子にどさっと座り込んだ。

キリトも疲れた表情を見せながら、俺の向かいの椅子に座り込んだ。


「あ゛ー、疲れた〜」

「うん・・・・そうだね」

既に疲れは最大のピーク、水の一杯でも飲みたいところだが、おかみさんはもう水の一杯も出してくれないようだ。俺達には見向きもせず、ただ再び釜戸の鍋をことことかき混ぜている。

俺とキリトはただボーッとNPCの挙動を見守り続けていた。その何分後に、視線の先でおかみさんは棚から木製のカップを取り出し、鍋の中身をお玉でそっと注いだ。

湯気が立っているカップを、アニールブレードより大事そうに持って、奥のドアへと歩いていった。不思議と俺は立ち上がってしまいおかみさんの後を追った。ドアを開けてみれば、おかみさんは薄暗い部屋へと足を進める。

いくらNPCでも、勝手に部屋に入るのに少し躊躇いが出たが、俺は足を止めずに敷居を跨いだ。そして同じくキリトも敷居を跨いだ。


入ってみればそこは寝室であり、寝室にあるのは壁際のタンスと窓際のベッド、後は小さな椅子が1つだけあった。

そしてベッドには、年の頃7、8歳と思しき少女が横たわっていた。
月明かりに照らされていても分かるほど顔色が悪かった。首は細く、シーツから覗く肩は骨張っている。少女は母親に気付くと僅かに瞼を開いた。次に俺を見てきた。俺はこれに立ち尽くしていると、少女の血の気のない唇に、仄かな微笑みが浮かんだ。

母親は右手を伸ばし、少女の背中を支えて起き上がらせる。その途端、少女は身を屈め「コホコホ」と咳き込んだ。少女の傍らに表示されているカラー・カーソルを確認する。NPCのタグが付いていて、名前は《Agatha》と出ていた。

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