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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第十話 軍議
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かってくるんだ。

「北条氏規は関白殿下が九州征伐に注力されている頃より、北条家中において関白殿下に恭順すべきと一貫して主張し豊臣家と交渉しておりました。その頃、関白殿下は西国を未だ制覇しておりませんでした。その関白殿下に恭順するべきと考えた北条氏規の洞察力は真のものと存じます。近江中納言様は違うと思っておられるのでしょうか?」

 豊臣秀次は押し黙った。この場で違うとは言えないよな。

「相模守、話を先に進めよ」

 秀吉は豊臣秀次を無視して俺の話を進めるように促した。

「北条氏規は北条氏の象徴といえる韮山城を守り抜くことに主眼を置いているはずです。我らの大軍ならば一度に複数の城を攻めることができます。そうなれば韮山城は孤立します。聡明な北条氏規が城から出て戦うような愚かな選択をするとは思えません」

 俺は暗に北条氏規が韮山城から出て豊臣軍に攻撃を仕掛ければ自滅すると言った。補給のない籠城など滅びを待つだけだ。北条氏規も分かっているはずだ。この籠城策は精々豊臣軍が小田原に向かうのを遅らせるしかできない。西国を抑えた秀吉に後顧の憂いはない。小田原城が落ちるまで秀吉は攻める手を休めることはない。

「北条の狙いは我らの兵糧が無くなり兵を引くことを狙っているのでしょう。故に大軍を迎え討つために箱根山を選んだのです。足柄城、山中城ともに急峻な地にあり攻めにくい城です」
「我らの大軍を相手にするならば守り易い急峻な地を選ぶのは当然だろう」

 豊臣秀次が俺に指摘してきた。

「近江中納言様、ご指摘の通りです。しかし、北条家はこの戦い方を得意としております。足柄城、山中城を突破されようと北条は動じないでしょう。なぜなら北条は初めから小田原城に籠城するつもりだからです。北条の目的は急峻で狭い街道にある山城で出来るだけ我らをその場所に止めて兵糧を減らさせることです。そして、小田原城にて豊臣軍の兵糧が尽きるのを只待つのです。北条の本城、小田原城、はただの城ではありません。都市を丸ごと囲んだ巨大な城です。当に北条家の象徴といえる堅城にございます。この戦い方で精強で知られた武田と上杉を撃退してきたのです」
「相模守、では我らは敗れると申すか」

 豊臣秀次は鬼の首を取ったような顔をしている。

「敗れるはずがありません。我らは北条の予想を超えた戦いが可能です。我らは大軍を養う兵糧を絶えず補給することができます。今までの戦国の常識を覆す一戦となり、豊臣家の威光を天下に示すことになりましょう」

 俺が話を終えると後ろから武将達の威勢の良い声が聞こえてきた。武将達はやる気十分のようだ。豊臣秀次は俺の物言いに完全に沈黙していた。秀吉は機嫌良さそうに俺のことを見ていた。秀吉の側近くにいる徳川家康は俺に感心した様子だった。


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