第二章
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「何よりもな。そしてだ」
「それを司る私もだというのですね」
「人間達からそう見られているな」
「自覚はしています」
「それでもいいのか」
ハーデスはタナトスを気遣いながらまた彼に問うた。
「そなたは」
「ではです」
「では?」
「私が死を司ることを止めます」
このことをだ。タナトスはハーデスに対して問うた。問い返した形だった。
「それならば誰が死を司るのですか」
「誰が、か」
「はい、誰がなのですか」
「それは」
「いませんね」
こうだ。タナトスは静かにハーデスに述べた。
「だからこそです」
「そなたは死を司り続けるのか」
「その通りです」
「そうか。そうするのか」
「それを言うのならハーデス様もです」
ハーデスに対してだ。タナトスはまた問い返した。
「どうなのでしょうか」
「私か」
「ハーデス様も冥界におられますね」
「ここが私の世界だ」
「ここは暗く。そして支配するのは死んだ者達ばかりです」
そこがハーデスの世界だ。ゼウスは天界、ポセイドンは海界を治めそしてハーデスはこの冥界だ。三柱の神々はそれぞれの世界を治めているのだ。
だがその冥界についてだ。タナトスはハーデスに問い返したのである。
「陰惨なものも多いです」
「暗く惨たらしい世界だというのだな」
「冥界は地獄も多く占めています」
このことは否定できなかった。誰にも。
「しかしそれでもハーデス様はこの世界を治めておられますね」
「私の務めだ」
だからだとだ。ハーデスは冥界の主神として答えた。
「だからいいのだ」
「なら私もです」
「その死を司るのか」
「はい、そうしていきます」
こう言うのだった。
「このままです」
「そうか。そう言うのか」
「私はこれからも死を司ります」
その銀色の瞳にはっきりさせたものを見せてだ。タナトスは語る。
「ハーデス様と同じく」
「人から嫌われる仕事であっても」
「そうしますので」
こうハーデスに答えてだ。そのうえでだった。
彼は死を司る務めを続けた。だが彼はやはり人々から忌み嫌われ続けていた。
そんな彼に対してだ。今度は双子の兄弟であるヒュプノスが尋ねた。
二人は今は夜の空を舞っている。そのうえでそれぞれの務めに入ろうとしていた。だがその中でだ。ヒュプノスはこう双子の兄弟に言ってきたのだ。
「ハーデス様にはそう言ったがだ」
「あのことか」
「御前はそれでもいいのだな」
「死を司り続けることか」
「それでもいいのだな」
「御前は安らぎをもたらしているな」
「眠りをな」
眠り、それが即ち安らぎだというのだ
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