第九十八話 蛍光その七
[8]前話 [2]次話
「それだけで印象が違います」
「蛍を見ても」
「そうなのです」
「そういうことなのね」
「ですから」
「同じ蛍を見ても違う印象を受けるのね」
「そうかと」
「そういえば」
今度はモンセラさんが言った。
「夜のピラミッドで蛍を見たことあったけれど」
「ピラミッドってマヤやアステカの」
「そう、あのピラミッドよ」
こうラブポーンさんにも話した。
「階段があって神殿みたいになってる」
「階段の左右に獣の頭が連なってる」
「あれ神様だから」
獣の頭でなく、とだ。モンセラさんはラブポーンさんにこのことも話した。
「獣じゃないわよ」
「そうだったの」
「マヤやアステカには色々な神様がいて」
「ああした神様もいるのね」
「人間の姿の神様もいれば蛇やジャガーの姿の神様もいるの」
僕は話を聞いていてケツアルコアトルやテスカトリポカという神様を思い出した。まさにそのマヤやアステカの神様達だ。
「それでね」
「ああした顔なのね」
「そうした神様もいるのよ」
「成程ね」
「それで夜にそのピラミッドのところに行ったことがあるの」
メキシコのピラミッドのというのだ。
「その時に見たのよ」
「蛍を」
「それがまた幻想的で」
「何か神秘的ね」
ラブポーンさんはモンセラさんのその話を聞いて行った。
「それって」
「想像してみた?」
「ええ、それでこう思ったわ」
実際にというのだ。
「ちょっと現実にはなさそうな」
「そんな風でしょ」
「本当にね、モンセラはそれを見たのね」
「そうだったの」
「いいもの見たわね」
「ええ、よかったわ」
実際にとだ。モンセラさんはラブポーンさんに微笑んで話した。
「見ていてね」
「そうよね」
「あのピラミッド自体がそうじゃない」
「神秘的でね」
「その周りに蛍達が飛んでたのよ」
夜の世界の中にだ。
「見ていて夢に思えたわ」
「そこまでなのね」
「家族で試しに行ってみたの、ただね」
「ただ?」
「夜だから周りには注意していたわ」
「ああ、治安ね」
「メキシコも結構ね」
このことについてはだ、モンセラさんは曇った顔で話した。
「治安がね」
「まずいのね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「行ったのも私達の家族だけじゃなくて」
「ツアーみたいな感じだったのね」
「家族単位でも危ないのよ」
「メキシコだと」
「夜、しかも南部はね」
「麻薬組織?」
「そう、連中がいるから」
だからだというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ