第五章
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「私は今回はあくまで、ですね」
「お二人を祝福する。言うならば」
「脇役ですね」
「その通りです。私達は祝福を行う立場でありです」
「祝福される立場ではない」
「祝福されるのは主役です」
とにかく結婚式とはそういうものだった。カレーラス神父はこう話してだった。
あらためてだ。一旦目を閉じた。
それから深呼吸してだ。また目を開いて言った。
「行きます」
「腹をくくられましたね」
「そうしてみました。こうすればですね」
「そうです、何事も置いても腹をくくることです」
「そうすれば上手に行きますね」
「私もそうでした」
グレゴリ神父の表情が変わった。これまでも微笑みだったがだ。
懐かしむ感じの微笑みになったのだ。そしてその微笑みでの言葉だった。
「かつてはです」
「緊張されましたか」
「そうです。しかしそれも克服しました」
「腹をくくってですか」
「その通りです。そうして挑んで、です」
「そうですか。ではです」
「あのお二人をお願いしますね」
暖かい笑みになってだ。グレゴリ神父はまた言ってきた。
「祝福してあげて下さい。主と同じく」
「そうですね。お二人はいつも主の前で会われていたから」
「主に続いてですね
「そうなるのですね」
「そのこともおわかりになられましたね」
「はい」
その通りだとだ。カレーラス神父は今こう答えられたのだった。遂にだ。
そのうえでその結婚式に向かうのだった。その歩きはじめたところでだ。グレゴリ神父は再びだ。その彼に声をかけてきたのであった。
「最後にですが」
「?最後にとは」
「主と共にお願いします」
十字架にいる主、その神の御子と共にだというのだ。
「お二人を祝福されて下さい」
「そういうことですか」
「はい」
グレゴリ神父は微笑んだカレーラス神父に微笑みで応えた。
「その通りです。それではです」
「はい、ではそうしてきます」
「神と主は常に傍にいます」
優しい微笑のままだ。グレゴリ神父は言っていく。
「そして人を見守っているのですから」
「そうですね。私がどうかではなく」
「はい、神と主です」
「あの方々が認められているのなら」
例えそれが教会での密会だとしても。それでもだというのだ。
「それでいいのですね」
「その通りです。では」
「行ってきます」
カレーラス神父もだ。彼がこれまで見せたことのないこのうえなく優しい微笑みになってだ。そのうえでだった。
教会の礼拝堂に向かった。そして人生の中で最高の幸せの中にいる彼等を心から祝福した。十字架にいる主の微笑みをその背中に受けて。そうしていたのだ。
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