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真田十勇士
巻ノ七十四 最後の花見その六

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「だからな、秀頼様をお護りしたい」
「天下人になれずとも」
「それでもですか」
「あの方の傍にいて」
「そのうえで」
「そうしたい、ただ秀頼様はな」
 秀頼自身のことも言うのだった。
「今は治部殿、義父上が周りにおられるが」
「ではいいのでは」
「何の問題もないのでは」
「あの方々がおられるなら」
「それならば」
「いや、治部殿達がおられなくなると」
 幸村が話すのはこの時のことだった。
「周りにおられるのはな」
「人が、ですか」
「おられぬ」
「そうなるというのですか」
「その時は」
「女御衆はな」
 茶々をはじめとした大坂城にいる女達だ、近頃妙に目立ってきている。
「政や戦のことは知らぬ」
「大坂城のですな」
「茶々殿とその周りの方々ですな」
「あの方々ですな」
「あの方々は」
「政を知らぬ、戦もな」
 まさにそうだというのだ。
「だから秀頼様の周りが女御衆ばかりになると」
「その時は、ですか」
「治部殿や義父上がおられなくなり」
「あの方々ばかりになると」
「秀頼様は危ういですか」
「うむ、その時はな」
 どうもというのだ。
「危ういであろう」
「左様ですか」
「では豊臣家は治部殿達あってですか」
「秀頼様の頃になると」
「そうなりますか」
「天下はお譲りしてもな」
 それでもとも言う幸村だった。
「いいやもな」
「左様ですか」
「そうもなりますか」
「天下はおろか」
「秀頼様ご自身まで」
「人は誰でもじゃ」
 それこそ天下人でもだ。
「一人では出来ることは限られておる」
「ましてや幼いとなると」
「どうしてもですな」
「出来ることが限られている」
「非常に」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからな」
「それでは秀頼様は」
「あの方の場合は」
「どうしてもですか」
「治部殿達が必要ですか」
「治部殿達ならば二百万石の豊臣家の身代でもな」
 それもというのだ。
「治められるであろうが」
「おられねば」
「天下はおろか」
「そうなりますか」
「あの方々がおられれば」
「その場合は」
「そうだが。しかしな」
 それでもというのだった。
「あの治部殿がじゃ」
「徳川殿の天下を認められるか」
「問題はそこですな」
「忠義のお心が強い方ですし」
「非常に一本気な方ですから」
「あの御仁の忠義は無二じゃ」
 そう言っていいものだというのだ。
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