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真田十勇士
巻ノ七十四 最後の花見その二

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「派手にな」
「派手にですか」
「そうじゃ、思いきり派手なな」
「そしてですか」
「皆で楽しもうぞ」
「そうされたいのですね」
「うむ」
 その通りというのだった。
「どう思うか」
「よいかと」 
 これがねねの返事だった。
「それでは」
「当然御主もじゃ」
 ねね自身もというのだ。
「よいな」
「わかりました、それでは」
「共に楽しもう、そしてな」
 秀吉はさらに話した。
「拾も連れて行く」
「では」
「茶々もじゃ」
 彼女もというのだ。
「他の室達もな」
「皆で」
「騒いで楽しもう、酒も用意してな」
 これも忘れていなかった。
「茶もじゃ、民達にもな」
「振舞うのですね」
「花見の場に来た者は誰もじゃ」
 それこそ身分に関係なくというのだ。
「茶と酒、それに食いものもな」
「好きなだけ」
「振舞うのじゃ、これまでにない花見にするぞ」
「では私も」
「ははは、そういえば御主とはな」
 秀吉はねねに笑ってこうも言った。
「暫く共に花見をしていなかったな」
「そうでしたね」
「有無、結婚した時はな」
 その時はというと。
「毎年楽しんでおったな」
「そうでしたね、あの頃は」
「足軽であってな」
 その身分が低かった時はというのだ。
「気軽に楽しめたな」
「麦飯の握り飯だけ持って」
「二人で花見をしておったな」
「そうでしたね」
「その頃にな」
 屈託のない明るい笑顔での言葉だった。
「戻った気持ちになってな」
「そのうえで」
「楽しもうぞ」
 花見をというのだ。
「是非な」
「それでは」
「楽しもうぞ」
 こう話してだ、秀吉は大々的な花見を開くことにした。その場所のことも天下に知らされてそのうえでだった。
 幸村もだ、十勇士達にその話を紹介された。
「太閤様ですが」
「その様にお考えです」
「これまでにない花見をと」
「その様に」
「左様か」
 まずはこう応えた幸村だった。
「今の重さを消す為のか」
「その様です」
「どうやらです」
「そうしたことは言われていませんが」
「太閤様もそうお考えかと」
「そうか、それ自体はよいことじゃ」
 幸村も頷いた。
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