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俺の四畳半が最近安らげない件
ファラオの案内人
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その松明は…いつかファラオが目覚める日の為にファラオの傍らに。
その花束は…暗闇で目覚めるファラオの心を慰めるために。
その果物は…目覚めたファラオの、最初の食事として。


―――とまぁ、ファラオの為に用意されたこもごもの物資を細々と消費しながら俺はこの墓陵で生き永らえている。


四角錐をしたこの墓陵は俺が設計した。いつか目覚めるファラオの財宝が不遜な輩に荒らされないように、幾多の罠をしのばせた。そして…ファラオの墓に深く関わった者の常として、俺も葬られる…筈だった。
俺の家族には最大限の便宜が払われる。それにこの仕事に抜擢された時から覚悟はしていた。俺に後悔はなかった。
なかったのだ。
しかし、王族の誰かがいらん提案をした。


「この者を、いつか目覚めるファラオの案内人として、ファラオの傍らに置きましょう」


成程、俺は弑され、ミイラにされてファラオの傍らに並べられるのだな。…と静かに腹を決めたときに、あほかと思うような提案が彼の口をついた。
「徳の低い人の子は、ミイラにしても蘇りますまい。生きたまま墓を守らせ、ファラオの復活に備えましょう」


は!?なに云いだしてんの!?馬鹿なの!?


死体と一緒に墓に幽閉とか完全に殺してもらったほうがマシなやつじゃん!?俺なんか悪い事した!?
それをもっとやんわりと偉い人たちに伝えたが、彼らは聞く耳を持たない。俺はファラオ崩御の日まで墓陵の工事には携わりつつ、軟禁されることになった。食事は妙に豪華だったし家族との面会も割と自由で、家に帰れないこと以外は全く不自由ではなかったが…頼む、俺の寿命。ファラオより先に尽きてくれ。


と願い続けた年月も虚しく、ファラオは若くして崩御した。


先ず、ファラオの遺体が運び込まれた。
そしてミイラにした際に取り出したファラオの内臓。供物。財産。
満を持して俺。
大臣かな?て感じのやつが『初の試み』とか『忠義の案内人』とかなんとか興奮気味に叫んでいた。じゃあお前も入れ、初の試みだぞと墓穴に引きずり込んでやりたくて歯を食いしばった。
俺は王の傍らに追加された『案内者の間』とかいうくそ狭い空洞に押し込まれた。この部屋は5クピド四方の正方形。…何故か、『四畳半』という言葉が頭を掠めたが、何の事だかは分からない。…有り難いことに『王の間』と行き来自由だ。そして俺用の水と食料が運び込まれた。


思った通りだ。一月分くらいだろう。


俺は小さい頃、王のミイラ工房に忍び込んだことがある。あの時処理されていたのがどのファラオだったかは知らないが、内臓やら脳やら引きずり出す工程は割とテキトーだ。引きずり出された脳もはらわたも、ぐっちゃんぐっちゃん。いつか復活した時のために甕に入れて保管しておくという名目だ
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