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俺の四畳半が最近安らげない件
ファラオの案内人
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が、ミイラ職人が一番、復活を信用してないに違いない。
王族連中も何だかんだ云って復活など信じていないのだ。俺に残された食料の量で分かる。この量なら俺は1カ月持たずに干からびる。王族特有の、ほんの思い付き。戯れだ。あいつらにとっては俺の死など、虫けら潰した程度の話なのだ。
もっとも俺は気が付いていた。
だからせめてもの抵抗にと、この墓陵のあちこちに設計図にはない秘密の小部屋を作り、干したナツメヤシだの焼いて固めた麦だのを忍ばせておいたのだ。これらは日持ちする。
なので俺は王の間に入り込み、日持ちしない果物を先に頂戴することにした。
ふざけんじゃねぇぞ、ここを設計したのはこの俺だ。何としてでも生き延びて、ここを脱出してやる。ひょっとしたら脱走の罪で射殺されるかも知れないが、墓陵で飢え死によりはずっとましだ………


「それ、私にもください」


口に放り込んだ葡萄を吹いた。
き、聞いてないぞ俺以外にも生き埋め要員が居たなんて!?
「ていうか、それ私のですね」


………ファラオ居た―――!!!!


「王かよ!!」
「第一声が王へのツッコミとか、いい根性してますね」
棺から半身を起こしたファラオが、俺を見下ろしている。
「ファラオまじで蘇るの!?俺たち葬られたの、ついさっきなんだけど!?」
「えぇ、ちょっと事情が」
「そんな速攻で蘇るんならちょっと寝室で我慢すればよくない!?ていうか俺が知ってるミイラ作りって、超テキトーに棒とかで鼻から脳みそ掻き出す感じなんだけど、あんなになっても再利用できるもんなのか!?」
ショックのあまりタメ語が止まらない。
「あぁ…そこの甕に入っているのは、私のじゃありませんよ」
「なんで!?」


「私が、死んでないからですねぇ」


彼は面倒そうに躰に巻かれた布を解くと、俺の傍らに座り込んで葡萄を口に含んだ。
俺はファラオという生き物を、まともに見た事がない。うちは代々、職人の家庭だし、殿上人の生活なんかには無縁だったから。偶に王のパレードなんかがあったが、俺は参加したことがない。忙しかったからだ。
始めてみるファラオは、なんだか昼行燈な普通の男だった。
「丁度いいタイミングで亡くなった少年の遺体を譲り受け、私の代わりにミイラの処理をしました。私はその間、物忌み中だった本殿に潜んでいたわけです」
彼の遺体は従者という名目で、召使の間に葬ってあります。それをここに運び込み、王の替え玉としましょう…ファラオは事もなげに云うと、ブドウの種を吐いた。
「―――いやいやいや、俺と一緒に脱走する体で話が進んでるけど!?」
「当然です。ここに住みたくてこんなことしてるとでも思っているのですか」
「それよ、どうしてこんなややこしい事をしたんだ。俺を副葬したのもあんたの差し
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