第48話『深雪』
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吹雪は依然止まず、大通りは白く覆われていた。
大地を揺らすほどの勢いと肌にしみるような寒さを感じながら、ユヅキはその吹雪をじっと見つめる。
これは間違いなく人為的なものだ。
しかし、こんな猛吹雪を魔法で放とうものなら、並の人間ではすぐに魔力が枯渇するだろう。というか、そもそも放てないはずだ。
「まさか…黒幕…!?」
「ウォルエナを防ぐためだけなら、ここまではしない。この街に敵意を持つ奴の仕業……ありえる話だ」
ミライの表情が変わるのを、ユヅキは見た。
憎しみを、怒りを、殺意を。それらを抱く彼の顔は、本来の綺麗さを失っていた。
ユヅキはもう一度吹雪を見た。
ごうごうと音を立てながら、断続的に流れている。
こんなのに巻き込まれたらひとたまりもないだろう。
「……あれ?」
その時、ユヅキの眼は何かを捉えた。
白く濁る雪の中、微かに影が見える。それには顔があり四肢があり、つまるところ人間の形をしていた。
「ミライさん、あそこに人が!」
「何!? どこだ?!」
「…ボク、行ってきます!」
「あ、ユヅキ!」
ユヅキは無我夢中で吹雪に飛び込んだ。その瞬間、全てから隔絶された気がした。視界は一面白色で塞がれ、当然鼓膜は役に立たず周りの音が一切聴こえない。
自分と、そして目の前の人影が唯一の存在。ユヅキは流れながらも、必死にうっすらと見える人影に手を伸ばした。
「よし…」
そして、しっかりと手を掴んだ。
冷たく冷えきっていたが、僅かに温もりはあった。
「・・・ユヅキ!」
「……っはぁ! はぁ…大丈夫…です」
「何て無茶を…。君が氷属性に耐性があるからまだ良かったが……」
吹雪から脱出し、その後ミライとどうにか合流する。
彼の言う通り、自分には氷属性の耐性がある。それを踏まえて飛び込んだはずなのだが……かなりキツい。
しかし、今はそんなことを気には留めていられない。
ユヅキは自分が手を握っている人物を一瞥すると、静かにミライに伝えた。
「…それよりもミライさん、これ」
「な…!?」
「やっと、会えたのに……こんなの酷いよ…」
ユヅキが握っていたのは、満身創痍で死体の様にピクリとも動かない晴登の右手だった。
しかも吹雪に流されていたせいか、服や肌が一部凍り付いている。
その悲惨な姿を見て、さすがにミライも絶句していた。
「どうしよう……」
「…ユヅキ、ハルトをこっちに。僕が治す」
「治すって…?」
「僕が使う魔法は治癒の効果があるんだ。それで何とか傷を塞いでみる」
その言葉に、ユヅキは希望を取り戻した。顔を輝かせてミライに頼
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