03威萌宇斗 鞠絵
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なに喜ばれるような事してないよ」
私は大切な事を忘れていました、それは心からの感謝の言葉、こんな私を思いやって下さる方々に対する愛の言葉を……
「私は皆さんの姉妹として生まれた事に感謝し、誇りに思います、ありがとうございます」
「鞠絵ちゃん」
私の名を呼んで、同じように抱き締めて下さる凛鈴さん、こんな素晴らしい方達と巡り合えて、同じ時間を過ごせるなんて幸せです。
「で、でもね……」
「はい?」
少し声を震わせて、汗をかいている凛鈴さん。
「サンプルの試験管が、何千本もできちゃって、下手したら何年もかかるかも、って思ったんだけど、そこに千影ちゃんが来て、奥の方から「これだよ」って1本取り出したんだ」
「まさか…」
「うん、それが大当たり」
やはり怖くなってしまいました… 凛鈴さんも少し怯えています。 あの方だけは別格でした……
ある日、海外から取材の申し込みがあり、私も治療の対象者として同席しました。 でも凛鈴さんはいません。 私の隣で喋っているのは、メカ凛鈴さんだったからです。
いえ、ご心配無く、病気になられた訳ではありません。 時間は少しでも研究に使いたかったそうです。
他の理由も凛鈴さんらしいものでした、「あたし、英語の発音苦手だから」だそうです。 こんな凄い発明をできる方が、英語が苦手なんて変ですよね。
でもVTRを回した時どうしてもノイズが出るので、凛鈴さんが来てメカ凛鈴さんのハッチを開けて電源を落とした時、スタッフの方が悲鳴を上げていました。 何でも、まだ世界には、二足歩行の自律思考アンドロイドは存在していないそうです。
それからCDCとか、MITなどに誘われた凛鈴さんでしたが、全てお断りしたようです。 理由はもちろん「アニキやみんなと一緒にいたいから」でした。 もう世界中捜しても、凛鈴さんに教えられる方はいないんじゃないでしょうか?
十数年後、スウェーデンに降り立った私達。 そうです、いつか読んだ本の主人公のように、私にも世界を旅する事ができるようになったんです。
「ねえ、鞠絵ちゃん、どうして医学賞なのかなあ?」
「こう言う物は何年か遅れて頂けるそうですよ」
あれから凛鈴さんの理論を応用しただけの方が何人も受賞していたので、私も行動を起こしました。 いつも書いていた韻を踏んだ難しい文章ではなく、誰にでも読み易い平文にして、あの時の出来事を本にしました。
きっと内容も分かりやすかったんでしょう。 ドラマになったり、映画になったり大変でしたが、あの頃の私の気持ちや凛鈴さんの心情が伝わったはずです。
評論家の先生には、本を売るための下らない話だと言われましたが、そんな事は関係ありません。 世界の読者からの声は、批判となって王立アカデミーに届き、こうして私達が呼ばれたので
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