03威萌宇斗 鞠絵
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聞かれて医学書を開き始めたのが1か月前。 それからは私が無理しないようにお願いしても「マイブームだから」と、「メカ凛鈴のボディーの研究には欠かせないから丁度いい」と言って止めて下さらなかったんです。
悪い予感はしていました。1週目で皆さんのアレルギーの検査をして、ダニアレルギーの私のために全員で大掃除をして、カーペットをフロアシートに変えたり、ミカエルの毛を短く刈ってシャンプーをすると、私の症状は軽くなりました。
でも喜んで下さった皆さんと違い、凛鈴さんは兄上様の表情だけを見ていました。 そうだったんです、やはりこの方は兄上様の笑顔を見るためだけに努力していたんです。
「じゃあ、専用のマスクを作るまでは、ゲストルームを消毒して、クリーンルームの替わりにするから。 ミカエルとはガラス越しに会えるようにするからいいよね?」
「分かりました」
こんな凄い方が兄上様を大切に思ってらっしゃるなら、私のような何もできない子供が適うはずもありません。 いつまでもお荷物で、ご迷惑をおかけする事しかできない妹が、好ましく思われるはずもないのですから。
それからまた皆さんに面倒をかけて、清潔に消毒された部屋に入っても、私にできたのは枕を濡らす事だけでした。 本当に消えて無くなってしまいたかった、邪魔なだけの私なんて死んでしまった方が良かったんです。
「じゃあ鞠絵ちゃん、すぐに何とかしてあげるからね」
「はい…」
そうでしょう、この方は本当にすぐに解決してしまうのでしょう。 症状を軽くして下さった時も、凛鈴さんはこう仰いました「まだ喉の炎症と鼻炎が治っただけだよ、本当の原因はこれから探さなくっちゃ」と。
何故私の目の下を覗き込んだだけで、それが分かるのでしょうか? 私は恐ろしくなりました。
その時に分かったんです、「この方は普通の方じゃないんだ」って、「白雪ちゃんや千影さんみたいに、私みたいな凡人の及ばない所にいる人なんだ」って。
料理をする時、白雪ちゃんも変な表現を使います。「味が見えますの」って、これとこれを足して、何分待つとこんな味になるとか、まるで私達が足し算や引き算をするように、味が計算できるようです、とても理解できません。
数日後、私は凛鈴さんの作ったマスクを被る事になりました。 ガスマスクでも良かったそうですが、あまりにも異様なので、ミカエルや雛子ちゃんが怖がってしまいます。
私は目の上から喉まである透明なマスクを被り、背中にフィルターを背負うと、簡単な外出もできるようになりました。 でも普通の空気を吸う事は厳禁でした、滅菌中に別の菌やウィルスに感染すると余計酷い事になるそうです。
それから何週間か、お医者様から頂いていた抗生物質を飲み続けると、塞ぎ込んでいた気持ちも穏やかになったような気がしました。
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