揃う蛇の番
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の浴衣を見たのだが、何と言うか下品だと思う。お兄ちゃんやお姉ちゃんに教えられた日本の侘寂を溝に捨てたような感じだな。
「お姉ちゃんはどんな感じ?」
「私のは、元士郎が染め上げて刺繍を施してるから。最近のは下品だからね。老舗のは週末までに間に合わせるのが大変だから」
「そんな簡単に作れるものなのか?」
「普通は無理だけど、元士郎、そんじょそこらの職人より職人気質だから洒落にならない品質で仕上げてくれるよ」
ちょうどタイミングよくドアがノックされ、お兄ちゃんが帰ってくる。
「出来上がったぞ」
「ちょうどよかった。ラウラに見せてあげたいんだけど大丈夫かな?」
「問題ないな」
浴衣を預かったお姉ちゃんは脱衣所に向かい、お兄ちゃんはカタログを見て顔を顰める。
「相変わらず派手で下品で値段も高いな。風流も理解していないしな」
「やはりそう思うのか?」
「ISが登場してからはずっとこんな感じだ。別に悪いというわけではないが、金色を使いすぎだ。生地も原色に近いのを使ってるからな。もっと淡い色を使った方が良いのにな。簪の浴衣はこれらの対極を行くから目立つぞ」
「そんなにか?」
「赤系の中に青系が混ざるんだからな。それも淡い色で柄もワンポイント。帯も同様に単色の紺色に正面にワンポイントが見える程度だ。渾身の出来だからな、これぞ真の浴衣だ」
お兄ちゃんがそこまで言うのなら本当にすごい出来なのだろう。楽しみにしながら待つこと10分ほど、お姉ちゃんが脱衣所から出てきて声を失う。カタログのものとは違い、淡い水色の生地に左足辺りにが描かれていて、深い紺色の帯には金色の蝶が水仙に誘われるように舞っている。
「綺麗」
「ありがとう、ラウラ」
「サイズの方も大丈夫みたいだったな。やっぱり浴衣は涼しげじゃないとな」
「相変わらずセンスが良いよね、元士郎。大変だったでしょう?」
「簪を綺麗にするためなら苦労でも何でもないさ」
「ありがとう。とっても気に入ったよ。それで、ラウラの分も頼んでいいかな?」
「そう言うと思って用意しておいた。着付けをしてやってくれ。あと、眼帯はこれね」
「それじゃあ着替えてみようか、ラウラ」
「うん」
脱衣所に連れて行かれ、着替えさせてもらいながら着付け方を教わる。
「へぇ〜、なるほどね。眼帯も衣装の一部なんだ。なら、髪は結い上げたほうが良いね」
後のお楽しみだと鏡を見せてもらえずにいるが、お姉ちゃんの言葉から中々すごい柄なのだろう。
「はい、出来上がり」
そう言って鏡を隠していたタオルを取り払ってくれて、綺麗だと思える私が立っている。黒地に右足あたりには淡い赤色の紫陽花の隣には緩やかな川が流れ、蛍が
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