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はたらく魔王様、天使の飼い方(鈴乃やエミリアともスルものの芦屋と漆原にもオッスオッスされる話)
01エミリア出生の秘密i
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教えないけど、猟師の中では一子相伝ぐらいの口伝で伝わってる話だ。だからお前の近所の人も、買い物に行く街の人も、「美人の奥さん」ぐらいにしか思ってなかっただろ?」
「信じないっ、信じないっ、絶対嘘だわっ!」
 大きな声を張り上げても、真奥の顔は見れなかった。その顔と目に「本当だ」「気の毒に」と書いてあるのは間違いない。
「天使ってのは、声以外の何かで仲間を呼べるらしい、その器官が首の下にある。それを切り取られると仲間も探せないそうだな」
「うそよ、うそ、嘘だわ、間違いよ……」
 芦屋の目も顔も見れなかった。その顔にも、敵ではあるが知人でもあるエミリアの出生の秘密を気の毒に思う表情があり、例え逃げ出しても階段に座って泣いている漆原が振り返って、人間に捕らえられてしまい、家畜として長年飼われてしまった同類を憐れむ顔を見てしまう。
 そして望まれずに生まれてしまった片翼の天使、天使の合いの子がどうやって生まれてしまうのか知っている堕天使が、泣いている表情を見せ付けられてしまう。
「嘘よ…… 嘘よっ、嘘なんだわっ!」
 その声に次第に狂気が混じり、1オクターブ、2オクターブと上がって絶叫へと変わった。
「お前のお母さん、背中から肺に突き刺さった矢傷があっただろ? 翼は半分に切られて再生しないように焼き切られて毒で締められて、首の下、喉笛掻っ切られて、仲間を呼ぶ器官を引く摺り出された傷もあっただろ?」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああっ! そんなの絶対に信じないいいいいいいいいいいいいいいいいっ! 嘘だわああああああっ! 魔王がっ! 魔族が勇者を陥れるために吐いた嘘だもんっ! 嘘に決まってるわああああっ!」
 真奥に襲いかかろうとしたが、ベターハーフを取り出せないのも重なり、その言葉が全て真実だと確定してしまったので、絶望に満たされながらいつもの100均のナイフを抜いて襲いかかった。
 ガタガタと震えた体では何の力も無く、聖なる力も憎しみや憎悪では発動できない。そんな攻撃は暴れる赤子か子供のように魔王には通じず、逆に哀れな迷い子として抱き締められてしまった。
「おうっ、げっ、おええっ! げぼおおっ!」
 最悪の気分と感情は、体を壊し始めて猛烈な嘔吐感に襲われ、真奥の体から離れてその場で嘔吐する。
 晩飯も、先程の紅茶入り砂糖も全て吐き出してしまい、orzの体制で胃袋の中身を全部吐き出し、それは胃液を吐くまで続いたが、真奥もそれを責めもせず、芦屋もそんな無様な勇者の姿を見て嘲りもせず、途中からコンビニ袋の中に吐くよう手渡し、無言で雑巾を持って来て清掃し、敵の吐瀉物を片付けた。

 そこでエミリアも気付いた。母が語り続けた父との愛の夢物語は、自分を慰めて騙し続けるための毒薬、愛しい我が子を憎まないで済むよ
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