第九十八話 蛍光その六
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「何か」
「面白いんだ」
「お話を聞いてるとね」
「ではです」
畑中さんがここで僕達に言った、そして。
鑑賞会が行われている部屋に入った、そこは元々は日本の夏の植物を集めている温室だった。
その温室に入る時にだ、畑中さんは僕達に言ってきたのだ。
「これより中に入りましょう」
「はい、今からですね」
「そしてです」
「蛍を観ますね」
「そうです、いよいよ」
まさにというのだ。
「観られます」
「そうですね」
「やはり夏は一度でもです」
日本の夏にはというのだ。
「蛍を観ないとなりません」
「そうしたものですね」
「そうです、では」
「はい、中に入って」
「観ましょう」
畑中さんが先導してくれてた、そのうえで。
僕達はその音質に入った、すると。
淡い緑の光が幾つも漂っていた、ふわふわと不規則な動きで飛んでいた。
その光を見てだ、畑中さんは微笑んで言った。
「いいものですね」
「ええ、とてもね」
ダオさんは満面の笑顔で畑中さんに応えた。
「見ているだけで幸せになれるわ」
「そうですね」
「ダオもね」
その蛍を観ながらだ、ダオさんも言う。
「蛍大好きだから」
「日本の蛍は如何でしょうか」
「いいわ」
一言での返事だった。
「聞いていた以上よ」
「左様ですか」
「見ていてね」
まさにというのだ。
「この世にいない気さえするわ」
「そこまでいいですか」
「ベトナムの蛍と同じだけね」
こうも言ったダオさんだった。
「奇麗よ」
「左様ですか」
「どっちが奇麗かはね」
それはというのだ。
「言えないわ」
「ベトナムの蛍にはベトナムの蛍の美しさがあり」
「日本には日本のよ」
だからだというのだ。
「どっちが奇麗とは言えないわ」
「そうですね、それはです」
「それは?」
「気温や景色の関係がありますね」
その二つの、というのだ。
「日本とベトナムの」
「景色ね」
「ここは外ではありませんが」
温室だ、その中に飛ぶ蛍達を僕達は見ているのだ。
「しかしあるのは日本の植物です」
「植物ね」
「日本の植物の中を飛んでいますので」
「景色がそれだから」
「また違います」
「そうなのね」
「はい、ベトナムの植物の中に蛍達がいますと」
それならばというのだ。
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