提督はBarにいる。一周年企画編
読者が来店編・序章
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「『鎮守府の繋がり強化月間』だぁ?」
そんな突拍子もない元帥のジィさんの発言を電話口で聞いたのは、7月も末のとある昼下がりだった。窓の外では非番の駆逐艦達がビーチで波と戯れたり、ビーチボールと戯れている。一瞬夏休みかな?と錯覚を起こしそうな程だ。……打って変わって執務室の中は書類の山と格闘中で、さながら地獄の様相だが。
「んだよそりゃ……下らねぇ話なら乗らねぇぞ俺ぁ」
『まぁそう言うな……実はの、近々大本営で陸軍との協力関係を改めて結び直す条約の締結式がある』
成る程、何となく見えてきた。今回のこのイベントは一種の【手打ち式】ってワケか。この間の霧島を巡る陸軍との一悶着、あれで憲兵隊の司令が更迭されて陸軍との緊張が高まっていた。それを重く見た上の連中が対外的にも海軍と陸軍、両者の手打ちのパフォーマンスを示す、という意味合いだろう。
「……で?何でそれが鎮守府同士の繋がりの強化に繋がる?意味が解んねぇぞ」
『じゃから、今まで鎮守府同士の横の繋がりというのは弱かった。友人や知人の所属する鎮守府はともかく、な』
「だから、知らねぇ鎮守府との繋がりを強くするって事か」
『まぁ、簡単に言えばそういう事じゃ』
まぁ、話は解らないでもない。どこで知り合いになるかも解らないし、突然援軍を頼む事もあるかもしれない。その時は少しでも縁があった方が良いだろう。
「でもそれが何でウチの鎮守府になるんだよ?」
そこが一番重要な部分だ。
『じ、実はの……お前さんの料理が絶品だと、方々で吹聴しておったらな?是非に行きたいとの意見が殺到しておってな』
「てめぇのせいじゃねぇかジジィ!このクソ忙しい時に何してくれてんだ!」
『やかましいわい!お主の飯が美味いのが悪いんじゃ!』
最早暴論だ。意味が解らん。しかし他の鎮守府の提督だけでなく政府の高官や公報が依頼したライター等も来訪を予定しているという。邪険に扱う訳にもいかない。
「どうするんです?提督」
「どうするもこうするも、やるしかねぇだろよ……」
はぁ。今から頭が痛いぜ……。逃げられるなら、俺も海で涼みながら現実逃避したい。でも今はまずこの書類の山をやっつけて、鎮守府来訪の支度を整えねば。
「食材の調達に、来訪者の下調べ、酒も吟味しねぇとな……」
「フフ、嫌がってる割にdarling楽しそうだネ?」
「やかましい、仕事しろ仕事」
ハーイ、と少し拗ねた様子の金剛を横目に、突き抜けるような青空を眺めてこれからの忙しさに思いを馳せていた。
「提督も仕事して下さいっ!」
「……へいへい」
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