大泥棒が鎮守府にやって来る〜会食編・その2〜
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て上にかける醤油あんかけ。かに玉を作った中華鍋に醤油、酢、砂糖、鶏ガラスープの素、お湯を入れ、中火で煮立たせる。そこに片栗粉と水を同量合わせて作った水溶き片栗粉を加え、とろみがついたらかに玉にかけて完成。
熱い内がかに玉は美味いからな、熱々の内に出してやろう。
「はいお待たせ、『かに玉』だよ。お酒は今注ぐから待っててな」
かに玉の濃い味に負けない辛口、ならばコレだろう。俺が選んだのは『森の菊川 本醸造辛口原酒』だ。こいつを造っている仙台の森民酒造は、「東北一の辛口蔵」とも謳われる蔵で、辛口の酒が殊更美味い。特にこの森の菊川は、アルコール20゜以上の力強い酒だ。
香りは控え目でハーブのような香りが漂う。一口含めばピリッとキリッとシャキッと、口の中を引き締めてくれる。喉越しにも刺激があり、飲み込んだ後には鼻と口に抜ける爽快感。先程五右衛門に出した剣菱よりも焼酎に近い味わいだが、しっかりと日本酒なのだ。ここまで強烈な爽快感、氷温(0℃)近くまで冷やして、ショットグラスでテキーラやウォッカのように飲んでも美味い。夏に飲むには最高だ。ライムをかじりながらなんてのもいいだろう。だが今回は、あえてオンザロックで出してやる。ウチの鎮守府では酒より料理を楽しみたい事の方が多い加賀ならば、酒を引き立て役にしたいのだろうからな。
「ハイよ、『森の菊川 本醸造辛口原酒』のオンザロックだ」
「ありがとうございます。では頂きます」
まだ湯気の立つかに玉に、スッと蓮華を差し込む。底はフワフワ、上はあんかけと卵液でトロトロ。完璧な火の入り具合だ。そのフルフルと震えるかに玉を口に頬張ると、無表情の白い頬に僅かに紅が刺す。目がうっすらと潤んでいるように見えるのは間違いではないだろう。
『あっちゃあ、猫舌だったか……』
これは少し失敗だったかなと思っていたが、森の菊川を口に含んで飲み込んだ加賀がフゥ、と息を吐き出して
「私は少々熱い物が苦手ですが……この組み合わせはとても良いと思います」
要するに美味かった、という事か。それならばいいんだが……残るは3人、さて何を出したものか。
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