巻ノ七十三 離れる人心その十一
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「許せぬ、そうした不埒者を成敗しただけじゃ」
「左様ですか」
「だからじゃ」
それ故にというのだ。
「このことはな」
「礼はですか」
「よい、気にするな」
笑ってこう言うのだった。
「わかったな」
「さすれば」
大谷は秀吉の言葉を受けて下がった、だが石田のところに行くとその場で感涙の涙を流しつつ彼に言った。
「このご恩、決して忘れぬ」
「刑部、それはわかったが」
その大谷にだ、石田は気遣う声で告げた。
「泣くな、目にもよくない」
「この業病にもか
「御主の身体のことを考えるとな」
「泣くこともか」
「よくはない、だからな」
「そうか、ではな」
大谷も頷いてだった、そしてだった。
涙を拭いてだ、あらためて言った。
「とにかくじゃ」
「この度のことはじゃな」
「わしは絶対に忘れぬ」
「そうか、ではな」
「これからもか」
「忠義を頼む、わしはあくまでじゃ」
「豊臣家にじゃな」
石田は大谷に問うた。
「死ぬまで」
「お仕えしたい」
「例え何があろうともか」
「そうか、御主は」
「そう考えておる」
「そうか、ではな」
大谷は石田に言った、その彼に。
「御主はそうせよ、わしはな」
「どうするつもりじゃ」
「いや、わしは天下泰平の為にな」
「働きたいか」
「そう考えておる」
まさにというのだ。
「そしてそのうえでな」
「お拾様をか」
「うむ、わしはお護りしてな」
そのうえでというのだ。
「天下の泰平を考えたい」
「そうか」
「しかし御主はか」
「あくまでじゃ」
石田の言葉は変わらなかった。
「天下はじゃ」
「豊臣家のものでありか」
「お拾様こそがじゃ」
まさにというのだ。
「天下人であられてこそじゃ」
「やはりそうか」
「うむ、御主もであろう」
「いや」
ここでこう言った大谷だった。
「わしは天下を考えたい」
「天下を、どういうことじゃ」
「天下の泰平をじゃ」
それをというのだ。
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