プロローグ
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抱えているのだ。おかしい。
頭を動かそうとするが、思うように動かない。いよいよ持って、おかしさに確信した。少し時間が経って冷静になっていた故に気付いた。と、そこで彼は頑張って手を動かし、視界内に入れた。
(…………………は?)
思考が停止する。視界内に映り込んだ、己の手であろうソレを見て呆然とした。小さい。余りにも小さな手が映り込んでいたのだ。その小ささは、あたかも赤ん坊のような手のサイズである。そこで、漸くここに至って彼は自身の状態を再認識した。そうだ。華奢な女性でも簡単に抱えられる筈だ。何故なら、そう何故なら────
────彼は赤ん坊なのだから。
(はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ─────ッッッ??)
内心で驚愕の声を張り上げる。なんで? 如何言う事だ? と彼は自分に問いかけるように叫ぶ。もしかしたら、自分が死んだ時以上の衝撃かもしれない。折角、冷静になっていたのに、ここに来て余計に混乱してしまった。とはいえ、それは仕方のない事だろうか。何故なら彼は、普通の高校生だったのだから。寧ろ、この体験をしても冷静を保てられる人間が居たら、そいつは異常と言えるだろう。
こうして、彼は自分の現状を察したのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アレから幾つ月日が経っただろうか。自分が赤ん坊になった事に混乱して、冷静に戻るのに実に五日を使った。そうして、やっと彼は赤ん坊になったという現状を受け止めたのだ。受け止めたとはいえ、問題は幾つもある。まず、ここは何処かのかだ。それと一番の問題はやはりアレだろう。
「─────」
隣に居る女性が笑みを浮かべてこちらを覗き込んだ。そう、未だになんと言っているのかが分からないのだ。恐らく、十中八九、目の前の女性は自分の親だと推測出来る。偶に、男性も見かけるがそれは父親だろう。ただの推測だが、当たっていると彼は思った。後、彼はここが日本じゃない事にも気付いた。それはある日の事。彼は外の景色を見る事が出来たのだが、そこで初めて視界に映ったのは、庭で戦う父親だと思う男性と、一人の幼い子供だった。
しかし、その戦い。いや組手は、あり得ないものだ。拳を振るう、蹴りを放つ。なんらかの格闘法なのだろう。だが、その動きは尋常ではない。しかも、不可思議なチカラも使うのだ。それを見た時、彼はここが日本ではない、いや地球ではないのだと悟る。なんだアレ、と眼を点にしたのは記憶に新しい。
それと、偶に外に見える異形の存在に、いよいよ異世界が濃厚かと彼は思考を放棄したりもした。その異形の姿を見た時の新心境は「なぁにあれぇ〜」だろうか。とまぁ、赤ん坊が故にあまり好き勝手に動け
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