プロローグ
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────俺は死んだ。
一つの世界に住んでいた少年は、突然に、死を迎えた。なんのことはない。死因は交通事故による、事故死だ。信号が青になり、歩いていた少年に、居眠り運転したトラックが衝突したことにより訪れた悲劇の一つだ。そう、少年は自分が死んだ事を自覚した。舞うは自身の体。衝突した衝撃により転がる。口から止まる事なく溢れる、大量の血。頭がチカチカし、体を動かす事が出来ず、全身に広がる激痛。
間違いなく助からない程の重傷を負い、少年はそこでプツリと視界が暗転した。即ち、死を迎えたのだ。だが、次に感じたのは誰かに揺らされる感覚だった。如何言う事だ? と疑問を覚えるのは当然と言えた。何故なら、あの日、あの時に死んだと思ったのだから。故に、疑問を覚える。自身の体が、誰かに揺らされている事に。まるで、抱え上げられ、赤ん坊をあやすように揺らされている。
もしや、これが天国か? と、今までそういう類の事を信じていなかった彼はゆっくりと瞳を開けた。そこに映るのは、一人の妙齢な女性。勿論、この女性の事を彼は知らない。見た事もない。全くの初対面である。と、そこで女性は眼を開けた彼に気付き微笑みの表情を向けた。穏やかに、慈愛を込めたその笑みに、いよいよ持って分からなくなる。
何故彼女は、自分にこんな微笑みを向けるのか? それが彼の心境だった。
「──────」
すると、女性は言った。しかし、その言葉を彼は聞き取る事は出来なかった。いや、聞き取る事は出来ないのではない、なんて言っているのかが分からないのだ。確かに、彼には女性の言葉が耳に入ってきていた。だが、ソレがどんな意味を持つ言葉なのかが分からない。そう、明らかに彼が知っている言語。日本語とは異なる言語だった。益々、理解不能な事態である。
そもそも、彼はごく一般的な高校生だった。そんな高校生がこんな突然の事にすぐ、理解出来る筈もない。眉を寄せて悩んでいると、女性がまた続けて言った。
「──────?」
しかし、やはりか。言葉の意味が分からない。だが、彼は意味が分からなくても、女性の表情を見て、心配している事を感じ取った。それに優しい人だなと彼は思った。見ず知らずの自分に対して、ここまで心配してくれるのだから。だが、彼は決定的な勘違いに気付いた。
おかしい。なにかがおかしい。まずは、周りが全体的に大きく感じるところだ。自身の身長は百七十センチメートルはあったはずだ。なのに、何故、周りにある物がこんなに大きく感じるのか。まるで、巨人が使うように見える。そして、もう一つは目の前の女性だ。彼女は自分を抱きかかえている。そう、百七十センチメートルの人間をいとも容易く、華奢に見える女性が
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