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卍(まんじ)
卍(まんじ)
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開けようと引き戸に力を入れるが、相変わらず、開かない。


「わ、私、もうだめ……立ってられない……」
 妙は自分より小柄な九兵衛の胸元に体を預けていく。九兵衛の耳元で、ハアハアという吐息と、
「着物が、もどかしい……脱ぎたい……」
 というささやき声が聞こえる。
 最早我慢できなかった。男として長年育てられたこともあった。
「妙ちゃんっ!!」
 九兵衛は妙の両肩をぎゅっとつかむと、荒々しく畳の上に押し倒した。
 そのまま、思わず妙の唇に、チュッとキスをしてしまう。
 再び。
 女同士で。
「「!」」
 その後、思わず我に返って、妙と間合いを離す九兵衛。
「ご、ごめん!」
 思わず目をそむけ、きつく目をつむった。
 きっとこれで僕は、あのゴリラのストーカーのように半殺しにされる。
 それは自業自得なので構わなかったのだが、それ以上に妙ちゃんに嫌われ、これまでの関係を続けられなくなることが彼女には耐えられなかった。
 なるほど、畳の上で仰向けになった妙は、予期しなかった出来事に、一瞬体を固くしたが……。
「大丈夫。怒ってないわ」
 にっこりと微笑み、九兵衛の両頬をつかむと、頭をあげてお返しのように唇にキスをした。
 続いて、自分の胸元に九兵衛の頭を抱きしめる。
 どくん。どくん。どくん。どくん。どくん。
 お互いの胸の高鳴りが、お互いに感じ取れた。
 妙からのキスと薬の影響で、九兵衛は再び我慢できなくなっていた。気が付くと目に涙がにじんでいた。
 九兵衛を抱きしめていた腕が緩んだので、思わず彼女は顔をあげると、妙もまた、潤んだ目でほほ笑んでいた。
「た、妙ちゃんっ……!」
 甘えるような声を上げると、妙のうなじに両腕を回して、九兵衛は再びキスをする。
 それも、先ほどのような短いキスではなく、相手の唇を吸い、舌を絡め、感触を味わう形だ。
 相手の妙も舌を出し、九兵衛の唇と舌をなめまわしていく。
 それが激しいのか、2人の口から、少し涎が垂れ始めた。
 お互いの唇は、柔らかく、甘い。


 1時間にも2時間にも思える長いキスが終わると、九兵衛と妙は顔だけを離し、何も言わないまま、お互いを見つめあった。
 潤んだ瞳で、先に口を開いてきたのは、妙だった。
「私、誰よりも怖かった……。
いつか好きな人と、こんなことするの……。
新ちゃんよりも怖かった。
日本中の、いや、宇宙中の誰よりも怖かった……」
「妙ちゃん……」
「でも……同じ女同士の貴方となら、
ううん……私を守ってくれると言ってくれた貴方となら、
貴方の左目になると言った私を受け入れてくれた貴方となら、いいかなと思って。
ううん、本当にそう思うよ」
 お妙はそう言うと、九兵衛の均整の取れた体に回した腕で、外套越しに背中
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