卍(まんじ)
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ると、この部屋は壁のいたるところに、お通ちゃんのポスターやシールが貼られてある。
新八の部屋だ。
しまった!
九兵衛がそう思うと、
「ただいまぁー」
玄関から、地味な間の抜けた、しかし喜びに満ちた声が聞こえる。新八が帰ってきたのだ。
「あれ、この履物……もしかして九兵衛さんもいるんですか? ちょうどよかった。お通ちゃんの新曲があるんですよー。2人とも聞いてみますか?」
にこやかで明るい新八の声だが、九兵衛も妙もそれどころではない。
自分たちの一番恥ずかしい部分から、熱があふれ出し、ジュクジュクに溶け、もどかしさが2人の頭を狂わせていた。
「なんなんですかぁ」新八の声が急に不機嫌になる。「せめて『お帰り』の一言ぐらい言ったっていいじゃないですか。どこにいるんですか?」
「ご、ごめん。新ちゃん、お帰り。私達今、新ちゃんの部屋にいるんだけど……」
囁くように言う妙。下半身に力が入らないらしく、膝が震えている。彼女もまた、自分の中の『女としての衝動性』をこらえているようだった。
「あれ? 何で2人して僕の部屋にいるんですか?」
「ご、ごめん、新八君……僕も……妙ちゃんも……ちょっと訳があるんだ……」
ハアハアと喘ぎながら、なまめかしい声を部屋の中から上げる。
「ごめん、新ちゃん……私も、その……」
妙も自分の中に急激に湧きあがる衝動に耐えながら、息を荒げて扉越しに新八に声をかけた。
「あ、あれ……」新八は2人の様子が、いつもと違うことに気が付く。「どうしたんですか、 九兵衛さん、姉上?……もしかして、病気?」
「違う、病気じゃない。おそらく……」
九兵衛は首を振って否定した。
そうしている間にも、体の疼きは膨れ上がり、服を着ていることがどんどんもどかしくなっていく。
自分の中の『本能』が目覚めていく。
「でも頼む、新八君。しばらくの間、僕と妙ちゃんは部屋から出られない。それをこらえてくれないか?」
「え、『病気じゃない』のに『出られない』って、2人ともどうしたんですか!?」
さらに怪しんだのか、新八は廊下から部屋に入ろうとする。
が、あらかじめ九兵衛が敷居につっかい棒を入れたため、ガタリと音がするだけで、戸は開かない。
「あ、あれ、開かない!?」
「頼む……僕も妙ちゃんも、これからどんなことをするか分からない……だから、これからの僕達の声はなるべく聞かないでほしい」
「え? どんなことをするかわからないって……」
「お願い、新ちゃん」妙も自分の中に容赦なく湧きあがってくる欲望を抑えつつ、戸に左手を当てて体を支えながら、喘いで言った。「後生だから聞かないでいて。とりあえず、客間ででも時間つぶしてて……」
「えっ!? ちょっと!? 姉上!? 九兵衛さん!!?」
新八は必死に自分の部屋を
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