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卍(まんじ)
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とひっかけて洒落たこともあったっけ。漱石は英語教師だけど、そのあたりのボキャブラリーにはびっくりだよ」
「そうそう、私の家には漱石の『道草』があるのよね。私の部屋にあるんだけど、見てみる?」
「そういえば、夏目漱石の小説って読むの久しぶりだな。読んでみる」
 2人とも立ち上がって、妙の部屋に向かおうとした。
 その時だ。
 急に九兵衛の中から、溶けそうな熱が湧きあがり、彼女の足をよろめかせた。
 薬が作用を示してきたのだ。
「あ、あれ……ど、どうしたんだ、僕……」
 とりあえず手近な壁に右手をついてバランスを保とうとしたところ、彼女は自分の胸を思いっきり触りたい欲求に取りつかれる。胸の先端も思いっきり固くなり、敏感になっているようであった。
触りたい……。でも、お妙ちゃんの目の前で、そんな事……。
「九ちゃん……? あれ……私も……」
 声がしたので、ちらりと妙の方を見る。
 妙も急に頬が赤々と染まり、目が据わり、呼吸がかすかに荒くなっている。足元もふらついている。
 僕も妙ちゃんも、病気になってしまったのか?
 風邪?
 ……いや、これがそれとはちょっと考えにくい。風邪は体の芯から熱が出て、それに頭痛、のどの痛みや痰が出るものじゃなかろうか。この熱は……自分の一番恥ずかしいところから出ている。
 熱さで服を着ていることも、もどかしくなり始めている。
 ハアハアと息が荒くなる。
 妙は右手で左胸のあたりを、左手で股間のあたりを着物越しにまさぐっている。両手がぶるぶる震えている。
「た……えちゃん……?」
 女友達の思わぬ行動に、九兵衛は思わず呆気にとられるが、やがて自分も妙も、同じ状況になっていることに気付いた。
「あああ……九ちゃん、九ちゃん、私を助けて! 私を強く?まえて、変になっちゃう前に!」
 急に妙は駆け寄り、九兵衛の胸に頭を預ける形で抱きついた。
「妙ちゃん……」
 胸の中にいる妙を意識した結果、九兵衛には別の欲求が生まれているのに気づく。
 彼女を求める欲望だ。
 おそらく彼女も、自分を……。
 とはいえ、客間は外廊下に面した戸があり、ここではまずい。開けられたら通行人皆に見られる。
「妙ちゃん……と、とりあえずあちらに行こうか」
 九兵衛は自分より背の高い妙(九兵衛は身長157p、妙は168p)を抱きかかえるように、両者ふらふらした足取りで、廊下を挟んだ向かい側の手近な部屋に入る。
 6畳半ぐらいの、勉強机と書物棚だけ置かれた質素な部屋。
 そして九兵衛は、熱い下半身と、ぐるぐる回る頭を必死で抑えながら、部屋の窓という窓、扉という扉を閉め、手近にあるものでつっかい棒までした。
 これなら、外から見えないし、外からも入れない。
「九ちゃん、ここ……」
 妙の囁く声ではっと我に返
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