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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第一話 因縁のある者達の再会
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腹に、右腕から心地よい温かさが榛名の頭に伝わってくる。

「……何か勘違いしているようだけど、私達はあなた達に復讐する気は一切ないわよ」

凰香の放った言葉を、榛名は一瞬理解することができずに呆然としてしまった。
すると凰香が片膝をついてしゃがみ、榛名と視線を合わせて言った。

「皆が生き返るんだったら喜んで復讐するわ。……でもそんなことをしたって、皆はもう生き返らない。寧ろ虚しくなるだけよ。それに復讐は『復讐』しか生まない。だから、私は復讐しない」

凰香の言葉を聞いた榛名は目を大きく見開いて驚愕した。
普通なら仇を取りたくて復讐などをするだろう。しかし凰香は目の前に仇がいるにもかかわらず、復讐をしないと決めていた。それは到底十代の少女とは思えないほど強い覚悟だった。
すると、凰香が言った。

「多分あなたは知らないだろうから言うけど、佐世保第十三鎮守府の提督と憲兵達が軍法会議所に連行されたらしいわよ」
「………!!」

凰香の言葉を聞いた榛名は驚愕した。
今までずっと事実を隠蔽し続けてきたあの男とその部下達が捕まったことが信じられなかったからだ。
これでもう地獄の日々が終わる。これ以上艦娘が苦しまずに済むのだ。
しかし、榛名はそれを素直に喜ぶことができなかった。その理由は簡単である。
榛名と夕立はあの鎮守府での生活に耐えられなくなり、脱走した。そして追ってきた長門達に粛清対象として砲撃された。
おそらく榛名と夕立は轟沈したことにされているだろう。たとえあそこに戻ったとしても、『裏切り者』として見られるだろう。
何にせよ、もう榛名と夕立は佐世保第十三鎮守府に帰ることはできない。まあ、脱走した時点でその選択肢は初めから無いのだが。

(これから……どうしましょう………)

榛名がそう思っていると、凰香が榛名の思っていたことを見抜いていたかのように言った。

「……行く宛ても帰る場所も無いのなら、ここに住めばいいわ」
「……いいの、ですか……?」
「別に断る理由が無いもの。二人も別にいいでしょ?」
「ええ、私はいいわよ」
「僕も同じだよ」

凰香にそう聞かれた防空棲姫と時雨がそれぞれ答える。二人とも榛名と夕立がここに住むことに異論は無いようだった。
そのことに、榛名の目からまた涙が溢れた。しかし、先ほどの三人に対する恐怖ではなく、『嬉しさ』からくる涙であった。

(ああ、なんて優しい人達なのでしょう)

榛名がそう思っていると、凰香が言った。

「とりあえず、今日はもう休んでいなさい。……防空姉、榛名を部屋まで連れていってあげて。時雨は夕立が目を覚ましたら、榛名と同じ部屋に」
「はいはい」
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