第一話 因縁のある者達の再会
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日本の南方の無人島にそびえ立つ旧泊地。かつて深海棲艦が現れ始めた頃、人類は深海棲艦との戦闘のために多くの島に前哨基地を建設していたが、深海棲艦との戦闘が激化していったことによって本土から離れている前哨基地は深海棲艦に集中攻撃されるようになったため、多くの前哨基地が放棄されるようになった。
この旧泊地もその一つで、入渠ドッグや工廠、食堂や演習場など一通りの施設は揃っているものの、艦娘や人間がいないためほとんど廃墟同然だった。
そんな旧泊地に、今現在一人だけ住み着いている少女がいた。
腰辺りまで伸びた黒い髪に闇を映したかのような漆黒の瞳、黒色の薄いコートを羽織った白いYシャツのような服に赤い線の入った黒いスカート、脛辺りまである黒いブーツ、そして右腕を覆う少女には似つかわしくない指先が鉤爪のように鋭く尖った赤黒い色の籠手。
この少女こそ、かつて10年前の艦娘による深海棲艦の奇襲作戦に巻き込まれた民間人の唯一の生き残りである『黒夢凰香』だった。当時は6歳であったが、今は16歳の少女である。
凰香は執務室と思われる場所で、かつて住んでいた家から持ってきたテレビを眺めていた。
『ーーーー次のニュースです。佐世保第十三鎮守府の大車健二郎提督が数々の不正や暴挙を行っていたことが明らかになりました。海軍本部によるとーーーー』
「…………」
「ただいま〜」
凰香がテレビの画面を眺めていると、突然声が聞こえてきた。そして次の瞬間、壁から先端が赤く染まった黒い二本の角が生えた白の長髪に黒色の鉢巻のようなものを巻いており、胸元に黒い金属の飾りが付いたお腹が丸見えの白色の半袖の服のようなものに黒いミニスカートのようなもの、黒い手袋に太ももに繋がれた鎖、そして金属の刺々しいブーツのようなものを身につけた女性がすり抜けて現れた。しかし、凰香は驚くこともなく表情を変えずに女性に言った。
「……おかえり、『防空姉』」
「……やっぱり、その呼び方変えない?人間の名前みたいにさ」
「いい名前が思いつかない」
凰香の言葉に、壁をすり抜けてきた幽体の女性『防空棲姫』が苦笑いを浮かべて肩をすくめる。実際はみじんも気にしていないのだろうが。
そんな防空棲姫を気にすることもなく、凰香はフワフワと宙に浮く防空棲姫に聞いた。
「それで、何かいいニュースはあったの?」
「そうねぇ………『欧州で北海油田に深海棲艦が侵攻。なんとか撃退したけど、大損害を被った』とか、『アメリカが第四次ハワイ侵攻艦隊を派遣するも、道中で深海棲艦の攻撃を受けてまた撤退した』とか、『日本軍がウェーク島にいる深海棲艦に攻撃を仕掛けるものの、挟み討ちを受けて撤退した』とかそんなのばっかりね」
防空棲姫が本土で仕入れてきた情報を凰香に話
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