63.彼岸ノ海
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も賛同している」
「あいつと意見が一致したか。反吐が出るほど不快だが、まぁ一般常識段階で共通の認識を持つことくらいあるだろうから今回だけ特例として見逃しておくか」
フレイヤのことが嫌いすぎる人ことオーネスト。そのうち同じ世界に生きていることが気に入らないとかいちゃもんをつけ始めそうだ。ちなみに全員の会話はオッタルの通信装置を通じてフレイヤ本人の耳にも届いているが、当人は気にしていないご様子である。
ただ、こうして会話している間にも魔力は消耗され、時間は経過し、そしてアズと向き合うオーネストも額に汗を浮かべ続けている。小休止どころか、戦いは今なお続行中なのだ。
アイズは先ほどのオーネストの言葉を思い出しつつ、愛剣の柄を所在なさげに触る。
『俺たちは、黒竜に動きがあるまでここから動かない。いいな?』
アズに向き合い何かをしながら、オーネストはそう断言した。
『でもこのままだとジリ貧だよ、アキくん。打って出ないの?』
『ジリ貧なのは黒竜も同じだ。アズも動けない現状、乗せられて先に動いたほうが負ける』
『つまり俺たちがここに閉じ込められているのは黒竜の苦し紛れの策だということか?』
『俺の読みではな』
死の淵を何度も経験して数多の犯罪の当事者となったオーネストの読みは、恐ろしく精度が高い。それに、現状この場所で――いや、オラリオ内で最も多く黒竜と接していたオーネストの言はどちらにしろ無視できない。
『俺たちは苦しいが、『奴も苦しい』のだ。そうでなければ残る力で俺たちをじっくり炒ることなく一度で押し潰しに来る。溶岩で包む――それで仕舞いだ。一番効率よく確実に倒せる』
一分の隙も存在しない溶岩で包むなり結界や氷を突き破る熱線を発射するなり、殺す方法はいくらでもある。アズが欠けた状態ならばこちらの最も取って欲しくない手段だ。確実に魔力が足りずに溶岩を浴びることになり、生存可能性があるのはリージュとアイズの二人くらいのものだろう。
理由はリージュがアイズに『源氷憑依』をかけ、アイズの魔法と重ね合わせて脱出する方法がとれるから。その場合、他の面子は溶岩の海に沈む。実際にはそのような非情な判断を下さねばならない状況にはなっていない。
『つまり、それを黒竜がしないのは……そうするだけの余力が残っていないから?』
『当然といえば当然の話だ。魔石の三分の二を焼失し、予期せぬ攻撃で切り札も失った』
『ついでに首も切断してある。本来なら戦える状態ではない』
あの一瞬にオッタルが首を切断し切らなければ、おそらく現状は変わっていた。自らに危険が迫っている可能性が高い中で敢えて攻撃を優先し、黒竜の鱗ごと首を切断した当たり、やはりオッタルという男も埒の外に存在する怪物なのだろう。
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