うわん
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んて。奥手なくせに」
…云うようになったものだ。この前まで中学生だったくせに。
「惚れっぽいわけじゃない。特定の相手が出来にくいから色んな子に目が行くだけだ」
「付き合ったら一途?」
「多分な!」
「多分て…」
「付き合うに至った事が1度しかない上に半年足らずで振られているからデータが少なすぎるんだよ」
「……ださ」
「ぽつりと刺さることを云うんじゃないよ。これだから子供は」
天を仰ぐように顔を上げた瞬間。
目が、合った。
一抱えもありそうな眼玉を持つ、巨大な何かと壁越しに、俺は見つめ合っていた。
「う わ ん」
脳髄に直接叩き込まれるような、津波のような声。それはバクリと開け放たれた巨大な口から放たれた。…ただ目を反らさないのが精一杯だった。俺の直感が、必死に訴えている。
―――目を反らした時が、俺が死ぬ時だ。
ふと、うなじ辺りで何かが蠢く気配を感じた。…そうか、お前らはいつも俺の傍らにいるんだな。少しだけ落ち着きを取り戻すと、自分が震えていることに気が付いた。…そして、傍らに縁ちゃんが居る事にも。
「縁ちゃん、逃げろ」
乾ききった喉から辛うじてそれだけ振り絞り、俺は小さく息を吐いた。
「鎌鼬」
耳元に小さな風の渦が膨らみ始めた。渦の中心に蠢く気配が、今は心強い。巨大な妖が大きな口をあんぐりと開けたまま、顔と同じほど巨大な腕を伸ばしてきたのを認めて、小さく呟いた。
「あれを、斬れ」
「う わ ん」
それは背後から聞こえた。
挟まれたか!?縁ちゃんは!?俺は思わず目を反らしてしまった。
「……え」
声を発していたのは、縁ちゃんだった。
「……しまった」
目を反らしてしまった。ぞくり、と悪寒が走り、俺は咄嗟に振り返った。
「あり?」
壁から身を乗り出していた妖は、煙のように消え失せていた。後に残ったのは、戸惑うように彷徨う3つのつむじ風だけ。
「最近は、出なかったんだけどねぇ」
そう呟く縁ちゃんの口調は、驚く程、奉と似ていた。
「なんか、色々あったんだね。その…後ろの子たち」
縁ちゃんが興味深げに鎌鼬を覗き込む。つむじ風は一度だけ大きく膨らむと、しゅるりと俺の背後に消えた。
「……色々な」
縁ちゃんは今回の一連の件を何も知らない。俺も奉も、語らないことを選んだのだ。縁ちゃんも『ふぅん』と呟いたきり、それ以上踏み込もうとしない。興味がないのか、こういう状況に慣れているのか。
「あいつ、何だったんだ」
「んん、私もよく知らない。ただ『うわん』て返すと居なくなるってことだけ知ってる」
「云わないとどうなるの」
「居なくなる」
「どっちにしろ居なくなるの?」
「何年か前、お手伝いさんが一人、居
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