83部分：第九話 知っていた罠その九
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第九話 知っていた罠その九
「我等狂闘士の絆は絶対のもの」
「それを断ち切る者がいたならば」
ユノの目にもまたリィナと同じものがあった。
「何処までも追い討ち倒す」
「例え誰であろうとも」
「で、俺をぶっ殺すってわけかよ」
デスマスクはここまで聞いても態度を変えないのであった。やはり軽口である。
「てっとり早く言えばそうなんだろ？」
「貴方という人は何処までも」
「ならばその軽口こそを」
「待ちなさい、ユノ」
激昂しかけたユノだったがここではリィナによって止められた。
「リィナ」
「怒ればそれだけキャンサーの思う壺です」
「そうでした」
すぐに冷静さを取り戻したユノであった。言葉にもそれが出ていた。
「そうなればそれこそ」
「まあどっちでも同じなんだがな」
デスマスクは己の耳穴をほじる仕草を見せながら相変わらずの調子であった。
「戦うんなら俺は女でも容赦しねえぜ」
「私達を女と思わないことです」
女と言われようが二人には動揺はなかった。むしろそこにはこれまでよりも強いはっきりとした気迫があった。それをデスマスクに対して向けているのである。
「狂闘士は男でも女でも変わりはありません」
「それもまた」
「まあそれはいいんだがな」
今度のデスマスクの目は醒めたものだった。今回もやはりあえてそうしているような素振りであった。まるで全てを芝居だとわかっているかのように。
「じゃあはじめるんだな」
「来なさい」
「あらためて三人の仇を」
二人はその赤い小宇宙を放ちつつデスマスクに対して向けていた。デスマスクの次の相手は他ならぬこの二人であるのはもう明白であった。
「取らせて頂きましょう」
「アーレス様の戦士としての誇りにかけて」
「誇りねえ」
デスマスクもまたゆっくりと構えてはいた。
「俺もちょっとはあるんだがな」
「戯言を」
リィナは今のデスマスクの言葉は即座に否定したのだった。
「おいおい、即答かよ」
「貴方の様な不真面目な人物がどうして誇りなぞと」
「そもそもです」
ユノも続く。
「黄金聖闘士とは思えないその軽さ」
「貴方の様な者が黄金聖闘士とはアテナの聖闘士も落ちたもの」
今度は聖闘士への侮辱になっていた。
「それはこちらとしてはよいことでしょうが」
「アテナも大したことはありませんね」
「おいおい、また随分と言ってくれるじゃねえか」
デスマスクはすぐに二人に対して言い返してきた。
「アテナの聖闘士が落ちたものだってか」
「違いますか？」
「そしてアテナも大したことはないってか」
口の端を歪めて二人に言葉を返していた。
「そりゃ全然違うな。零点の返答だぜ」
「違うと」
「ああ、そうだ」
また言うデスマスクであった。
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